2009-08-17
人は合理性ではなく欲望で動く
人は、何らかのインセンティブに反応して行動します。あることをしたほうが自分にとってお得なら、人はそうする。逆もまたしかりです。経済学は『リスク』と『リターン』のバランスでこれを説明します。一般的に合理的といわれるのは経済的合理性のことを指します。現在、この経済的合理性が世界を取り巻いていまが、私達の住む社会において、この経済的合理性ではどうしても説明がつかない場面が結構あります。
その経済的合理性を大きく左右するのが『欲望』です。人はタバコを吸います。ギャンブルに興じます。過労死するまで働きます。地価は急騰し、バブルは崩壊します。経済的合理性だけを考えるとリスクとリターンのバランスはあきらかに崩れています。これらの行為は欲望の力が大きく作用しています。そういった人の不合理さを研究するのが、行動経済学という分野です。
『欲望』は認識が難しいです。自分ですら理解しづらいものを他人が分かるのは至難の業です。それを出来る限り『定量化』し認識できたなら、その人は極めて合理的に行動できるはずなのですが、殆どの人が欲望は曖昧のまま非合理的な行動をとってしまっています。欲望を認識することを拒否している人もいるくらいです。
思い切って『欲望』を打算と割り切って『計算』することが、世の中を上手く廻すのに一定の役割を果します。欲望を上手にコントロールする仕組みを自己の内部に作り『計算』する。併せて相手の欲望を計り、経済的合理性に組み込んでいくことを追求していけば、精度の高い試算ができます。そうすると欲望が動くときには合理性が崩れていても構わないことに気づきます。欲望が経済的な合理性を補完しているからです。
合理性は論理(Logic)、欲望は意志(Will)に左右されます。最近の成長が停滞しているのは若い世代が合理性に傾倒して、欲望を低く見ている一方で、いままで欲望で何とかしてきた世代が合理性を学んではいますが感情的に欲望を優先させるような行動をとり続けているからだと考えられます。
合理性と欲望は、車の両輪みたいなものです。どちらが欠けてもうまく動きません。歴史上の史実を見渡してみても経済的に不合理に見える行為が存在します。これらの史実の裏には上手く欲望を操作した人が存在するはずです。一見不合理に見える行為の裏には必ず人間の『欲望』が隠れているのです。
マズロー「欲求階層論」
1. 生理的欲求
2. 安全安心の欲求
3. 愛情や所属の欲求(集団欲・序列欲)
4. 人から認められたいといった欲求
5. 理想とする自分になりたいという自己実現の欲求
参考文献
予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」
- 作者: ダンアリエリー,Dan Ariely,熊谷淳子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/11/21
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