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鳩山・小沢の再接近に菅が怯えた夜(2/2)

文藝春秋8月10日(火) 12時12分配信 / 国内 - 政治
 選挙後の菅は、傍目からは比較的元気に見える“躁状態”の日と、逆に明らかに心ここにあらずという“鬱状態”の日が交錯していた。党内外からの様々な批判に対して「何するものぞ」という気概を見せるときがあれば、役所のレクチャーを受けても上の空で、目はうつろというときもある。側近は菅の本心を読み取ることに躍起となったが、菅自身は九月の民主党代表選を控え、続投への足場固めだけを考え続けていた。

 参院選中、民主劣勢の情勢が伝えられると、それに呼応するかのように、小沢グループを中心に、「五十議席を下回るようなことがあるなら、九月の代表選で菅の無投票再選はありえない」との主戦論が強まっていた。

 投票日翌日の夜、東京・港区の焼肉屋に小沢グループの面々が集まった。

「これでは親方の辞任が意味がなかったといわれても仕方がない結果だ。代表選には親方が出られるべきだ」

 小沢側近の衆院議員・松木謙公がそう述べると、岡島一正らからも賛同する威勢のいい声が続いた。

 六月の代表選では最終的に出馬を見送り、この会合には加わらなかった総務相・原口一博も、周辺には「できれば三人くらいの候補者がいい。閣内からも出馬して、代表選で政権の総括を議論するのがよい」と述べており、自らの出馬に意欲をにじませている。

 小沢グループと鳩山グループが一致して原口を推すことになれば、一気に菅の有力な対抗馬となりえる。

 さらに同じく閣内にあって、前回は菅を支持した国土交通相・前原誠司も、菅への厳しい見方を強めている。

「閣内にある自分から見たって、おかしいと感じるところがいくつもある。国家戦略局を党内議論もなくあっさり引っ込めちゃうとか、政治主導のシンボルだったわけでしょ」

 前原は各省の予算を一律に一割削減するという菅の方針にも真っ向から反発しており、自身の代表選への出馬を見据えているという説も根強い。

■「小沢副総理説」が浮上

 七月二十九日、様々な思惑を孕(はら)みながら、参院選総括の場となる民主党の両院議員総会が開かれた。枝野や安住への辞任要求はもちろん、菅自身も責任をとるべきだという厳しい意見が続いた。神妙な面持ちに終始した菅は、最後に「九月の代表選までは今の執行部でやらせてもらいたい」と述べるのが精一杯だった。小沢は案の定、総会を欠席したが、この日会談した前筆頭副幹事長・高嶋良充には、はっきりと菅批判を口にした。

「昨年の政権交代で支持された改革が後戻りしている。予算編成の一律削減方針などは明らかに財務省主導であり、政治主導でなくなっている」

 小沢・鳩山グループを中心に菅包囲網が広がっていくなか、ここに来て「小沢副総理説」も囁かれ始めた。

 小沢がいま最も恐れているのが、検察審査会の動向だ。四月に十一人の審査員の全員一致で小沢に起訴相当の議決を下した東京第五検察審査会が、再度、起訴相当の議決を下せば、小沢は強制起訴されて刑事被告人の身となる。第五検察審査会の審査員は四月の時点から全員交代したため、再議決は代表選後にずれこむ見通しだ。小沢が代表選に出馬したり候補者を擁立して前面に出てくることが、審査員の心証にどのような影響を及ぼすか。小沢はそうした要素も計算しながら、代表選に臨まなくてはならないのだ。

 今年二月に起訴された小沢の元秘書の衆院議員・石川知裕は民主党を離党した。九月の代表選で小沢側が敗れ、その後に小沢が起訴されれば、執行部から離党勧告を突き付けられる可能性がある。

 そのため、再度の起訴相当を恐れる小沢が自ら閣内に入る道を選ぶのではないかという観測が民主党内にある。実は、憲法七十五条に「閣僚は内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない」との条項がある。議決の時点で小沢が閣僚であれば、この条文を盾に起訴を免れることが理論的には可能になる。だとするなら、菅が最初から裏で小沢と手を握り、代表選後の挙党態勢を大義名分に「小沢副総理」を打診し、小沢もそれを受け入れるのではないか――。もしそうなら、代表選はとんだ茶番劇になりかねない。

 一方で小沢はいま、ねじれ国会で少数与党になった参院ではなく衆院に視線を向けている。「法案が参院で否決されても、衆院で三分の二を握って再議決する道を模索するほうがハードルは低い」というのが小沢の考えだ。参院では過半数まで十二議席足りないが、衆院の三分の二まではわずか六議席だ。

 七月二十七日、前国土交通副大臣・辻元清美が社民党離党を表明した。当面は無所属で活動するというが、昨夏の総選挙では「民主党推薦の辻元です!」と連呼して当選、小沢とのホットラインを売りにしてきた。辻元以外にも、「小沢はさらに自民党などにも手を突っ込もうとしている」(民主党議員)。

 その自民党は、参院選で悲願の改選第一党の座を獲得した。総裁・谷垣禎一は当面続投するが、九月に予想される党役員人事で幹事長・大島理森らの交代は確実だ。後継幹事長に意欲を見せるのが、自民党「影の内閣」でともに本部長代理を務める三人、政調会長・石破茂、組織運動本部長・石原伸晃、広報本部長・小池百合子だ。「今回、オレのほかに適任者はない」と石破の鼻息は荒く、石原も「党内がまとまるというのが、一番大事な条件」と意欲を隠さない。また、大島や石破は「百二十%ない」と言い切るのだが、それでもなお民主党との「大連立」の可能性を指摘する声がある。元首相・森喜朗は、三年前の福田康夫内閣時代に大連立構想に関わり、小沢と密会した。現在も橋渡し役を買って出ることに意欲的といわれる。

 参院選で十議席を獲得して躍進した、みんなの党代表・渡辺喜美は、民主党との連立に否定的だ。渡辺は周辺に「来年四月、予算成立と引きかえに解散総選挙になる可能性が高い」と語り、次期衆院選に候補者を百人規模で立てる準備に入った。公明党代表・山口那津男は「九月の民主党代表選を見ないと何も動けない」と様子見を決め込んでいる。

 結局、政局の行方は九月の民主党代表選にかかっている。九月は永田町の住人にとって「魔の月」だ。二〇〇六年から続けて四年、首相が交代した。今年の九月も何かが起きるのか。 (文中敬称略)

(文藝春秋2010年9月特別号「赤坂太郎」より)

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  • 最終更新:8月10日(火) 12時12分
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