さて、今回の事件は、
ホメオパシーそのものの問題だと
考えている人が多いようですが、
まったくそうではありません。
問題は、大きく二つに分かれます。
1.該当の助産師が所属する「日本ホメオパシー医学協会」特有の問題。
そこでは本当にホメオパシーを行っているのか?という問題です。
2.ホメオパシーの科学的根拠、科学的証明に関する問題。
今回の事件は、
実際にはホメオパシーそのものによって起こったのではなく、
1の問題によって起きたことですが、
それに伴って、2の問題もクローズアップされています。
しかし、さまざまな記事や議論を拝見すると、
1と2の問題とが混同されているため、
論点がずれた議論になりがちです。
この2つはまったく次元の異なる問題です。
今回このブログでは、
2の問題について
じっくりと書いていきたいのですが、
1と2が混同されがちなので、
まずは1と2の「腑分け作業」が必要です。
その腑分け作業に、
数回かかると思います。
そして、その後に
2の論点、
科学性の問題に、
じっくりと入っていきたいと
思います。
1の論点は、そもそもホメオパシーとは何か、
そして、その団体で行っているのは、
本当にホメオパシーなのか、という問題です。
ホメオパシーは、
その方の症状の全体像に対して
1種類のレメディーを処方します。
すなわち個々の症状をバラバラに見るのではなく、
あらゆる症状を一元的に包括する
1つのレメディーを見つけて処方します。
そのために、全感覚を研ぎ澄まし、
話をよく聞き、
それを総合的に分析し、
熟慮の結果、レメディーを決定する。
それがホメオパシーであり、他にホメオパシーはありません。
しかし、この「本来のホメオパシー」は、
真の科学であり芸術であるので、
高度な修練を必要とします。
それを知らないで飛び込んだ方たちや、
そういう修練に興味がない人たちは、
もっともらしい理由をつけて、
安易な方法に走ることになります。
そして「ホメオパシーレメディーを使うけれども、
本来のホメオパシーではない別の療法」
が広まり、
安易な処方や、危険なセルフケアが
蔓延することになってしまったのです。
(詳細はいずれまた書きます)
「本来のホメオパシー」を行う人は、
それと混同されることを非常に嫌がり、
「本来のホメオパシー」のことを、
「クラシカルホメオパシー」と呼んでいます。
私自身はその名称を使うことを余り好みませんが、
一般的にはそのように呼称されています。
本来のホメオパシーとは何か、について、
クラシカルホメオパシーの
代表的な認定機関である
アメリカのCHC
(Council for Homeopathic Certification) は、
明確に規定しています。
CHCの分厚い冊子には詳しく載っていますが、
ネット上でもコンパクトな形で同じ事を紹介しています。
http://www.homeopathicdirectory.com/index.php?option=com_content&view=article&id=69&Itemid=110
次のうち1つでもあてはまらなかったら、
ホメオパシーレメディーを使っているとしても、
それはホメオパシーではありません。
ⅰ.同種の法則に基づくこと。
つまり、クライアントが示す症状の全体像と
レメディーの症状の全体像をマッチさせること
ⅱ.1人の症状の全体像は1つであるので、
それら全体を一元的に包括する1つのレメディーを処方する。
ⅲ.レメディーの選択はケース分析によって行われる。
ホメオパシーの基本に基づかない形で行われる
キネシオロジー、Oリング、ダウジング、キルリアン写真、
またVoll、Interro、Quantum Xeroid
などの「波動測定器」などで選ばれるのではない。
ⅳ.一度に処方されるレメディーは一種類。
レメディーはコンビネーションで処方されるものではない。
ⅴ.健康を回復していくために必要最小限のレメディー量が処方される。
これらは、
本来のホメオパシーをやっている者からすれば、
言う必要もないくらい、
当たり前のことです。
要は、これらのうち一つでも欠けるならば、
ホメオパシーレメディーを使っていても、
ホメオパシーとは言えないということです。
野球のボールを使ってサッカーをしたら
それはサッカーでもなく、
野球でもない、
別物である、
というのと同じです。
今まで「ホメオパシーレメディーを使うけれど、
本来のホメオパシーではない別の療法」
をホメオパシーと思いこんでいた方は、
非常に多いのではないか、
と思います。
さて、次回は、
1の問題の中で、
非常に深刻かつ複雑な問題について
書きたいと思います。
現代医学に対する安易な否定による
医療ネグレクトの問題です。
その中には、
今回のVK2の問題、
予防接種の問題も含まれます。
ただし、VK2の問題と
予防接種の問題とは、
まったく異なる問題です。
VK2は、栄養素なので、
VK2シロップは「栄養補給」ですが、
予防接種は、「栄養補給」ではもちろんありません。
有名な「前橋レポート」もあるように、
(前橋レポートの全文はこちらからダウンロードできます)
http://www.kangaeroo.net/D-maebashi.html
予防接種は医師の間でも
賛否両論ある難しい問題ですので、
この2つを決して一緒にしてはなりません。
また、「好転反応」、「症状は有難い」
という言葉の誤用、乱用、
これも深刻です。
そこについても
詳しく書く予定です。
つづく
コメント (14)
朝日新聞のブログから来ました。
本文でホメオパシーに当たり前のこととしてⅰからⅴまで挙げていますが、これはどのように有効性が検証されたものなのでしょうか?
言い換えれば、このようにしなければホメオパシーではないということを、どのような方法で確認したのか、お答えいただけると幸いです。
投稿者: enju | 2010年08月06日 23:52
日時: 2010年08月06日 23:52
> ただし、VK2の問題と
> 予防接種の問題とは、
> まったく異なる問題です。
> VK2は、栄養素なので、
> VK2シロップは「栄養補給」ですが、
> 予防接種は、「栄養補給」ではもちろんありません。
VK2ってのは確かに「栄養素」ですが、
乳児に対するVK2投与は
「頭蓋内出血という重篤な疾患に対する予防薬」として
所謂「栄養」というよりも、明確な目的を以て使われています。
そこを敢えて「栄養素」という言葉を使うのは、
VK2シロップがさもコンビニで売られているサプリメントの様なものと
思わせようという恣意的な言い換えなのではないですか?
そして、重篤な疾患に対する予防薬を実質否定しているという点では、
由井寅子もあなたも同じ穴の狢ですよ。
投稿者: 中川剛 | 2010年08月07日 17:34
日時: 2010年08月07日 17:34
enjuさま ホメオパシーの基本的要件としてあげた5つは、ホメオパシーの創始者ハーネマンの主著であり、ホメオパシーとは何かを定義している「オルガノン」の中に、繰り返し書いてあります。その正当性、妥当性はその後の無数の臨床によって定まっています。CHCは、アメリカの検定機関ですが、ホメオパシーの「世界標準」を反映し決定しているともいえる、純粋な検定機関です。
中川剛さま VK2は栄養素です。新生児の場合には、胎盤透過性その他の問題があって、必要量摂れない場合があり、それが時として死亡に至るほどの重篤な事態を惹起しえます。ご存知のように、栄養素というのは、極めて重要で、例えばビタミンBの欠乏によって起こる脚気で、日露戦争中に数万人が亡くなったりしたように、栄養素の欠乏は、極めて重篤な症状を起こしうることが、今ではよく知られているところです。ですから、ご指摘のように「栄養素という言葉を使うのは、コンビニのサプリメントのようなものと思わせようとする恣意的な言い換え」、とおっしゃる意味が分かりませんので、お教え願います。
「重篤な疾患に対する予防薬を実質否定している」とおっしゃる意味がまだ理解できません。私の文章のどこを根拠にそのように要約されていらっしゃるのでしょうか?お教え願います。
宜しくお願いします。
投稿者: 永松昌泰 | 2010年08月07日 23:01
日時: 2010年08月07日 23:01
>その正当性、妥当性はその後の無数の臨床によって定まっています。
はじめに書きましたように私は朝日新聞のブログから来ていますので、その記事内容を踏まえてお答え願えませんか?
まず個人経験は根拠になりません。
そしてプラセボを除外できる方法での効果測定でなければなりません。
その前提の上で「ホメオパシーの基本的要件としてあげた5つ」が必要不可欠だということを、どのように確認したのかとお尋ねしています。
根拠となる文献も挙げてもらえるとありがたいです。
投稿者: enju | 2010年08月08日 02:39
日時: 2010年08月08日 02:39
enju さま あなたのお書きになられた意味、よく理解しているつもりです。私は以前、統計学を専門にしておりました。そして、医学論文の統計処理のアルバイトを何年もしていたことがあります。
そのうちに、私は従来行われている医学論文の統計処理や、統計の意味について、根本的なところから疑問を抱くようになりました。そのあたりから、ブログの中でじっくりと書いていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
投稿者: 永松昌泰 | 2010年08月08日 07:31
日時: 2010年08月08日 07:31
申し訳ございません。
私の早とちりだったようですね。
さて、とは言えやはり、
重篤な疾患に対して予防薬として栄養素を摂取することと
予防接種を峻別する事の意味が分からないのですが
御教示いただけますでしょうか。
投稿者: 中川剛 | 2010年08月08日 10:23
日時: 2010年08月08日 10:23
中川剛さま まさにそのあたりをじっくりと書かせていただきますので、よろしくお願いします。 暖かいコメント、有難うございます。
投稿者: 永松昌泰 | 2010年08月08日 11:56
日時: 2010年08月08日 11:56
どうもうまく受け取ってもらえていないようなので、もう一度書きますね。
私は「ホメオパシーの基本的要件としてあげた5つ」に根拠があるのかどうかを尋ねているのであって、永松さんが従来の統計処理をどう思っているのかを尋ねているのではありません。
とはいえこのままだと言葉遊びを繰り返すだけでしょうから、
・二重盲検試験などを含む従来の統計処理において、「ホメオパシーの基本的要件としてあげた5つ」は実証されているのか。
この点についてお聞きしたいです。
投稿者: enju | 2010年08月08日 14:22
日時: 2010年08月08日 14:22
enju さま
ご質問の内容が、ここで簡単に説明できるような内容ではなく、ブログでじっくりと書かせていただきますので、申しわけありませんが、これを最後にさせていただきます。
ホメオパシーを構成する要素を、二重盲検法で決定することはありません。意味がないからです。
ホメオパシーで二重盲検法を使い始めたのは、今から150年前の1860年代からです。1885年にアメリカのホメオパシー医学会の総会の中で、合意事項として明文化されています。現代医学より先立つこと約60年前から使っています。
先駆者のホメオパシーから見ると、二重盲検法には根本的な欠陥が多くあり、限定的にしか使えません。
また、基本的にホメオパシーはオーダーメイドの治療法ですので、統計ははじめから意味を持ちません。ちょうど既製服のサイズは、統計を使って決定しますが、直接その人のサイズを測るオーダーメイドの服には、統計は何の意味もないのと同じです。
真の検証とは何か、ということも含めて、じっくりと書きますので、恐れ入りますが、ブログをお読みください。
投稿者: 永松昌泰 | 2010年08月08日 17:12
日時: 2010年08月08日 17:12
オーダーメイドの治療法には統計が意味を持たないとのお言葉に異議有り。
レメディを与える手続きに二重盲検法を用い、
偽薬群とレメディ群を振り分けるだけで良い。
その他は全て通常のホメオパシーの用いる手続きとするだけで良いんです。
オーダーメイド服のサイズ決定に統計が意味を成さないのは確かですが
オーダーメイド服と既製服の装用感etcを比較するのに
統計は大きな意味を持つでしょう。
その意味で、この例え話は不適切です。
投稿者: 中川剛 | 2010年08月09日 12:40
日時: 2010年08月09日 12:40
遠まわしな表現になっているのが不満ですが、ようするに二重盲検法ではホメオパシーの効果が証明されていないことは分かりました。
しかし、一つ一つ確認しながら論を展開していくことはできないのでしょうか?
そのため学術論文では引用文献を挙げ、読者が検証できるようにしているのです。
今回の件も、基本となる前提条件にミスがあればそこからどのように話を進めようとも、土台が間違っているのですから全てが無駄になってしまいます。
ですから、書かれている内容の根拠を示してもらいたいとお願いしているのです。
あとオーダーメイドの治療法に統計が役立たないというのも疑問です。
まだどのように役立たないかを書かれていないので、それを指摘することができませんが。
とにかく現時点では永松さんが思っている統計の根本の欠陥とやらが示されていませんので、「ホメオパシーの基本的要件としてあげた5つ」が本当に必要なものなのか、その妥当性を確認することができません。
まだ内容は続いていくようですが、このような根拠を後回しにした中途半端な論の展開にならないことを求めます。
投稿者: enju | 2010年08月09日 13:48
日時: 2010年08月09日 13:48
中川剛さま enjuさま
お返事有難うございました。
ものには順序というものがございます。
すべてを根底から考え直す議論をしていきますので、
途中から始められません。
前回お書きしましたように、ブログの本論をお待ちください。
皆さまもお忙しいと存じますが、
私も海外からの講師のセミナーが連日入っておりまして、
20日までセミナーで毎日忙殺されております。
しかしながら、お持ちの疑問に対して、
徹底的に議論いたしますので、お待ちください。
有難うございます。
投稿者: 永松昌泰 | 2010年08月09日 14:56
日時: 2010年08月09日 14:56
どうも認識がずれているようですが、永松さんが中途半端なところから始めるから、疑問を挟まなければならなくなったのです。
途中から始めたのはあなたのほうです。
そのことを理解して、次は初めから一つ一つ確認しながら論を展開するようにしてください。
とりあえず答えをもらっていない疑問がありますが、今は答える気がないということなら保留にしておきます。
投稿者: enju | 2010年08月09日 20:37
日時: 2010年08月09日 20:37
enju さま
あなたの意味する「途中」と、私の意味する「途中」の意味がずれていますので、ここまでにしておきましょう。
ただ、答える気がないのではありませんので、それだけは申し上げておきます。
それから、私が意味している構成要素の意味と、あなたのおっしゃる構成要素の意味は、次元が違うものだと思います。
ただ、本文で申し上げたように、今このことでエネルギーを使いたくないので、申しわけありません。おっしゃっていただいたように、ブログの中でじっくりとお答えするまで、保留にさせてください。
投稿者: 永松昌泰 | 2010年08月09日 22:40
日時: 2010年08月09日 22:40