2010年8月10日0時2分
夏休みを返上したワシントンの友人に「こんどは君の番だからな」と水を向けた。共和党のブッシュ前政権が導入した富裕層に手厚い減税措置が年末で期限切れとなる。この処理をめぐり秋の中間選挙を前にしたオバマ民主党政権は試練に立つ。
友人によるとシナリオは三つ。ブッシュ減税をそのまま延長する案、高額所得層向けの減税だけを廃止して延長する方法、何もせずに自動的な期限切れを待つ案、というのだが、問題はやはり経済への影響だ。
ブッシュ減税廃止はそのまま大規模な増税効果となり景気回復に水を差す。共和党はもちろん無修正延長を主張しているが、政府部内にも同調意見が強い。連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は、ブッシュ減税延長は景気回復の後押しをすると議会で証言し、選挙区の景況が気掛かりな多くの与党民主党議員の共感を呼んだ。
さらに伏兵は財政赤字問題だ。民主党が補欠選挙などで連敗しているのは医療制度改革、巨額の税金を投入した金融危機対策などオバマ政権の“大きな政府”政策に対する国民の拒否反応の表れだ。膨れあがる財政赤字を減らすためにはブッシュ減税をやめるのが自然だという声も強い。
オバマ大統領は中低所得層向けの減税措置についてのみ期間を延長する案に傾いているというが、高額所得者の線引きなど、減税措置の範囲をめぐり民主党内も割れている。
米議会では目まぐるしい駆け引きが予想される。共和党は「オバマ民主党は増税政権」と日本の野党もどきの構えで、民主党は参院選で敗北した日本の菅政権の二の舞いを演じる懸念もある。世界はどこも同じ風で乱れる「千里同風」だ。(昴)
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「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。