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商業施設新聞
[2010.8.10]
商業記者の独り言
No.297
過剰な負債に喘ぐ韓国地方政府
嚴 在漢
 超豪華な庁舎の建設で非難されていた韓国城南市(京畿道)は、過剰な負債に耐えられず、結局、2010年7月にモラトリアム(支払い猶予)を宣言した。地域開発事業に使うべく、板橋(城南市管轄)特別会計から借用した5400億ウォン(約415億円)が返済できないというわけだ。日本の北海道夕張市を連想させるできごとで、企業ならば破産に準ずる深刻な事態と言わざるをえない。

 韓国では、地方政府などの放漫な財政政策が憂慮されていたが、これが現実化したと言えよう。城南市は、3200億ウォン(約246億円)を投入して豪華な庁舎を建設するという計画当初から、こうした体質に対する批判の声が挙がっていた。庁舎が古くなれば、改修したり新しく建設するのは当たり前だ。しかし、城南市の場合は、7万m²余りの敷地に、延べ床面積7万4000m²超という大型で豪華な庁舎であり、まさにこの間の批判を象徴する建物である。
 また、周囲の公園造成と公園道路の拡張だけでも実に1兆2600億ウォン(約969億円)の予算をつぎ込んだ。城南市は、数カ月前に地方選挙で市長が入れ代わったばかりだ。

 このような問題を抱えるのは、城南市だけではなく、大田東区、釜山南区など多くの地方自治体が無謀な開発事業や庁舎の新築事業などにより、財政面で極度に逼迫している。市長や町長は、選挙に向けて人気集めのために受けの良い公約を乱発し、財政を圧迫する大型事業を強行することが度々ある。韓国地方政府の財政自立度は、10年の全国平均が52.2%にすぎず、97年は63%だったが、00年は59.4%、04年は57.2%、06年は54.4%と減少してきている。
 さらに、現政府が減税政策を進めているため、政府からの地方交付金も大きく減少している。収入が減少しているのに支出は放漫……。地方政府の台所事情が厳しいのは、当然のことであろう。

 地方政府は、この状況を改善するため、地方債を発行して借金を返済している。つまり、赤字だらけの財政を埋めるために、将来の財源を引っ張ってきているということだ。地方政府の予算は、そもそも経常費が多いことから、事業費に使用する資金はあまり多くはない。このような状態で大規模事業を繰り返すと、市民が本当に必要とする事業に予算が回らない。
 財政が厳しい地方政府は、城南市の事例を教訓にして、庁舎の新築や大規模な地域開発事業など、派手な事業を大幅に取り止めて歳出の構造を調整することが不可欠だ、と韓国の市民団体は指摘する。16の広域地方政府、228の基礎地方政府のうち、地方税の収入で人件費も払えない自治体は、10年に全体の半分以上となる137に上り、09年より23政府も増えた。このうちの27政府は、10年度の予算を編成する際に、脆弱な財政問題に対応するため、人件費予算を必要な金額の80%程度に設定している。

超豪華な造りが論争の的となっている城南市庁舎
超豪華な造りが論争の的となっている城南市庁舎
市民の苦情も相次いでいる
市民の苦情も相次いでいる