政府は10日の閣議で、日韓併合100年に際しての首相談話を決定した。過去の植民地支配について「多大の損害と苦痛に対し、ここに改めて痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明したい」と強調。植民地時代に朝鮮半島から日本へ流出した朝鮮王朝の主要行事などを記した古文書「朝鮮王室儀軌（ぎき）」などの図書を「韓国の人々の期待に応えて近くこれらをお渡しする」とした。

　菅直人首相は日韓併合100年という節目に「首相談話」という形で改めて謝罪の意思を示すことで未来志向の日韓関係の構築に取り組む姿勢を鮮明にし、両国関係の発展につなげたい考えだ。一方で、談話は韓国との補償問題には触れず、1995年の「村山談話」の枠内となった。

　首相談話は韓国側の心情に配慮し「韓国の人々は、その意に反して行われた植民地支配によって、国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷つけられた」と指摘。「歴史の事実を直視する勇気とそれを受け止める謙虚さを持ち、自らの過ちを省みることに率直でありたい」と記した。

　朝鮮半島由来の古文書「朝鮮王室儀軌」は15世紀から19世紀ごろの朝鮮王朝の祭礼や行事の作法を絵図などで記した儀典書の一つ。日本の宮内庁が所蔵しており、韓国併合後、朝鮮総督府を通じて当時の宮内省に移管されたと推定される。

　与野党内からは、朝鮮王室儀軌の引き渡しは1965年の日韓基本条約で決着した請求権問題の再燃に飛び火しかねないとの懸念も出ている。

　首相談話の発表時期をめぐっては日本の終戦記念日で、韓国側が植民地支配からの解放を祝う「光復節」の15日に合わせて発表することも検討したが、韓国の李明博（イ・ミョンバク）大統領が15日に演説を行うため、韓国側の意向で15日よりも前の発表となった。