「三橋貴明 暴論?あえて問う! 国債増発こそ日本を救う」

三橋貴明 暴論?あえて問う! 国債増発こそ日本を救う

2010年8月10日(火)

ギリシャ破綻と日本をダブらせる愚

4種類ある「政府の負債」を混同するから本質を見誤る

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 以上の通り、ユーロ加盟国であるが故の「特殊事情」を抱えるギリシャと、政府が国内の過剰貯蓄を借り受けているだけの日本政府について、「負債の絶対額」のみで比較し、「破綻だ! 破綻だ!」と騒ぎ立てる。果たしてこれら「破綻論」を主張する人々は、日本国債の保有者別内訳などのデータを、過去に一度でも目にしたことがあるのだろうか。甚だしく疑問である。

 国債などの負債が自国通貨建てである限り、政府は自国の中央銀行を通じて長期金利の調整が可能だ。長期金利とは、ずばり政府が資金調達(例:国債発行など)する際のコストである。

 政府が国債を増発すると、長期金利が上昇を始める。金利上昇を抑制するために、中央銀行が買いオペレーションで国債を買い取っていくと、代わりに通貨(厳密には流動性)が金融市場に供給され、インフレ率が上がっていく。

インフレ率が1万3000%になるとでも?

 破綻論者の中には、このロジックをとらえて、

「政府が国債を増発し、中央銀行が国債を買い取ると、ハイパーインフレーションになる!」

 などと、極論を言い出す人もいる。ちなみに、ハイパーインフレーションとは、インフレ率が1万3000%に達することである。この用語を使う人は、果たしてきちんと定義を踏まえた上で使っているのだろうか。もちろん、そんなことはない。

 「ハイパーインフレーション」という用語を使う人々は、センセーショナルに国民や社会を煽ること、それ自体を目的としていると考えて間違いない。あるいは、単に「無知」であるか、いずれかであろう。

 史上まれに見るデフレーションに悩む日本が、ハイパーインフレーションになる可能性など、月が地球に落ちてくる確率よりも少ない。それ以前に、この手のセンセーショナルな用語を使う人は、そもそも国民経済における「政府の役割」について、全く理解していないと断言できる。



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著者プロフィール

三橋 貴明(みつはし・たかあき)

作家、経済評論家、中小企業診断士
1994年、東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。外資系IT企業ノーテル、NEC、日本IBMなどでの勤務を経て2008年に中小企業診断士として独立、三橋貴明診断士事務所を設立した。現在は、経済評論家、作家としても活躍中。2007年、インターネットの掲示板「2ちゃんねる」において、公開データを詳細に分析し、韓国経済の脆弱な実態を暴く。これが反響を呼んで『本当はヤバい!韓国経済』(彩図社)として書籍化され、ベストセラーとなった。既存の言論人とは一線を画する形で論壇デビューを果たした異色の経済評論家。ブログ「新世紀のビッグブラザーへ」の1日のアクセスユーザー数は4万人を超え、推定ユーザ数は12万人に達している。2010年参議院選挙の全国比例区に自由民主党公認で立候補したが落選した。『日本の未来、ほんとは明るい!』(ワック)、『いつまでも経済がわからない日本人-「借金大国」というウソに騙されるな-』(徳間書店)など著書多数。


このコラムについて

三橋貴明 暴論?あえて問う! 国債増発こそ日本を救う

 日本がギリシャの二の舞になる? 冗談じゃない。そんなのは日本経済の構造を正確に把握していない人たちが言っていることだ。日本の真の問題とは財政赤字なんかではなく、将来への成長の道筋が見えないことである。そして、日本経済を再浮上させるのはこれまでの“常識”をうち破る成長戦略しかない。そのための国債ならばどんどん増発すればいい。そのプレッシャーを補って余りある底力が日本経済にはある。最も恐れるべきは、見かけの財政赤字に惑わされてダイナミックな政策を打ち出せなくなることだ。

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