以上の通り、ユーロ加盟国であるが故の「特殊事情」を抱えるギリシャと、政府が国内の過剰貯蓄を借り受けているだけの日本政府について、「負債の絶対額」のみで比較し、「破綻だ! 破綻だ!」と騒ぎ立てる。果たしてこれら「破綻論」を主張する人々は、日本国債の保有者別内訳などのデータを、過去に一度でも目にしたことがあるのだろうか。甚だしく疑問である。
国債などの負債が自国通貨建てである限り、政府は自国の中央銀行を通じて長期金利の調整が可能だ。長期金利とは、ずばり政府が資金調達(例:国債発行など)する際のコストである。
政府が国債を増発すると、長期金利が上昇を始める。金利上昇を抑制するために、中央銀行が買いオペレーションで国債を買い取っていくと、代わりに通貨(厳密には流動性)が金融市場に供給され、インフレ率が上がっていく。
インフレ率が1万3000%になるとでも?
破綻論者の中には、このロジックをとらえて、
「政府が国債を増発し、中央銀行が国債を買い取ると、ハイパーインフレーションになる!」
などと、極論を言い出す人もいる。ちなみに、ハイパーインフレーションとは、インフレ率が1万3000%に達することである。この用語を使う人は、果たしてきちんと定義を踏まえた上で使っているのだろうか。もちろん、そんなことはない。
「ハイパーインフレーション」という用語を使う人々は、センセーショナルに国民や社会を煽ること、それ自体を目的としていると考えて間違いない。あるいは、単に「無知」であるか、いずれかであろう。
史上まれに見るデフレーションに悩む日本が、ハイパーインフレーションになる可能性など、月が地球に落ちてくる確率よりも少ない。それ以前に、この手のセンセーショナルな用語を使う人は、そもそも国民経済における「政府の役割」について、全く理解していないと断言できる。