FC東京−名古屋後半ロスタイム、ゴールを決める闘莉王=味の素スタジアムで(隈崎稔樹撮影)
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また闘莉王が決めた。名古屋グランパスは8日のFC東京戦(味スタ)で0−0のまま迎えた後半ロスタイム、試合終了間際にDF田中マルクス闘莉王(29)が、三都主のクロスをヘッドで決め、1−0で劇的な勝利を挙げた。これで名古屋は鹿島を抜き2位に浮上して後半戦に折り返した。
◆名古屋1−0FC東京
試合再開の笛と、終了の笛が立て続けに鳴り響く。もう、倒れてもいい。精根尽き果てピッチに横たわった闘莉王の上に、増川が、楢崎が次々と折り重なった。野球なら、まさにサヨナラ弾。土壇場中の土壇場で決勝ヘッドを決めた殊勲の背番号「4」は、「正直、あまり時計は見ていなかった。点を取った後、審判が『もう終わりだよ』と言ってくれて、最後の力を振り絞った」と心地よい疲労に身を委ねた。
0−0で迎えた後半、ロスタイムは4分だった。最後のワンプレー。ドロー寸前で得た左サイドのFK。杉本には「ニアに走れ」と伝え、自らはファーサイドへ。金崎とのワンツーで深くまで切り込んでからクロス。そこに飛び込んだ。無我夢中。でも、こん身のヘディングシュートは確かにネットを揺らした。
今季5得点目。そのうち3点が決勝点という勝負強さだ。自身の「集まれ〜」をモノマネした日本代表の同僚・今野の上からたたき込み、「本物はこっちなんでね。オフザピッチ(ピッチの外)は気にしていない」としてやったりの満面の笑みを浮かべた。
10対20と倍のシュートを浴びせられた。ハーフタイム、控室に指揮官の怒声が響いた。「このままでは負けるぞっ」。後半も苦しい場面は続いたが、土俵際で勝ち点3をものにした。
リーグ戦の折り返し。勝ち点を35に伸ばし、2位につけた。確実に増すチームの総合力を感じている。「出ていない選手も幸せそうに仕事をしている。ズミ(小川)や巻もこのままじゃない。出ていない選手の力が必要になるときが必ず来る」。獅子奮迅の働きぶりは目立つが、決して1人で戦っているわけではない。全員の勝利。そのことを闘莉王自身が感じている。 (塚田陽一郎)
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