三重県鳥羽市と愛知県田原市の伊良湖(いらご)岬を結ぶ伊勢湾フェリー(本社・鳥羽市)が9月末での航路廃止を表明していた問題で、同社が行政の経済的支援を受けて航路を存続させる方向で調整していることが分かった。近鉄と名鉄が50%ずつ保有する株式の一部を三重、愛知両県と鳥羽、田原両市が引き受ける方向で、20日に開かれる2県と2市などでつくる「鳥羽伊良湖航路対策協議会」の会合で方針決定する見通しだ。【福泉亮、加藤潔、鈴木泰広】
伊勢湾フェリーは64年に設立された。現在、同社が唯一運航する鳥羽-伊良湖航路は、高速道路の整備や料金割引、景気の低迷などの影響で、09年度の利用者はピーク時の3割にあたる35万人に激減。負債総額は20億円に達し、同社は航路を廃止して会社の清算をすると3月に発表した。
これに対し、地元では「観光や地域間交流に欠かせない」と存続を求める声が強く、2県2市は国土交通省も加えた同協議会を設立。同社や別会社による運航継続のほか、フェリーを行政が買い取って貸し出す公有民営や第三セクター方式などを検討してきた。
近鉄、名鉄は撤退の意思が固く、行政も航路存続のためには、経済的支援はやむを得ないと判断。今後、出資比率や債務負担などについて協議を進める。
近鉄、名鉄は来週にも取締役会を開いて方針決定し、20日の同協議会で了承する見通し。伊勢湾フェリーは既に中部運輸局に事業廃止届を出しており、近く届けを取り下げることになる。
三重県鳥羽市の木田久主一市長は7日、20日に開催予定の鳥羽伊良湖航路対策協議会で最終的な方針が決定されるとの見通しを示し、「航路存続に対する市民の期待が大きかっただけに良かった。市民に元気を与える」と評価した。さらに「雇用や水産業の運搬など心配された経済への影響が回避される」と話した。
また愛知県田原市の鈴木克幸市長は、詳細については報告を受けていないとしながらも「何らかの公的支援が必要というのは行政としての最初からの方向。存続へ向けて対策協議会の事務局が支援の中身を会社と調整中だった。お互いに条件はあるが、歩み寄りの方向という流れは間違いない。そう(支援ということに)なれば、我々としても議会などに理解を求めていく」と語った。
両市を中心に三重、愛知両県ではそれぞれ、住民や商工団体などが航路存続を求める署名活動を展開してきた。【福泉亮、沢田均】
毎日新聞 2010年8月7日 14時03分(最終更新 8月7日 19時47分)