参院選:首相「消費税発言」抑制 演説内容を転換

2010年7月5日 21時36分 更新:7月6日 11時45分

 参院選(11日投開票)が終盤を迎える中、菅直人首相が街頭演説の内容を大きく転換し始めた。選挙序盤で繰り出した消費税増税に関する発言は影をひそめ、「政治の安定」を前面に立てて訴える戦略だ。毎日新聞の情勢調査で「与党で過半数(改選56議席)は微妙」となり、「守り」の選挙への転換を余儀なくされた。

 「政権が安定的に運営できるかは1人区が左右する。野党の議席が伸びたら『ねじれ状態』になり混乱が続く」。菅首相は5日、松山市での街頭演説で、混乱を招いた自公政権下の「ねじれ国会」を引用し「与党で過半数確保」を訴えた。民主党単独で過半数を握れる改選60議席獲得が厳しい情勢となったことへの焦りがにじんだ。

 これに対し、発言がトーンダウンしたのが消費税増税問題。首相はこの日、愛媛、香川、徳島3県で演説したがいずれも1人区。松山、徳島両市でわずかに消費税に言及したが、高松市では消費税に一切触れなかった。

 民主党は参院選の勝敗を決するのは1人区とみているが、4日まとめた毎日新聞調査では、消費税増税に地方の1人区での反発が強いことが判明。香川選挙区の民主系候補は、消費税増税に慎重な社民党との統一候補という事情もあったが、地元選出国会議員は「先んじて言える段階ではない。良かった」と本音を漏らす。

 首相発言は「消費税率10%」言及に「腰だめ」との批判を許し、税金還付対象の年収水準発言が「200万円~400万円」と定まらず「設計図がないからぶれる」(谷垣禎一自民党総裁)など批判を浴びた。

 党執行部は今月2日夜、仙谷由人官房長官も加わった選挙対策会議で対応を協議。安住淳選対委員長は「そんなに細かい話をしてはいけない」と首相に自重を求め、後半戦では消費税よりも「民主党にもう一度、チャンスを与えてほしい」と訴える方針で一致。仙谷氏は周辺に「もう大丈夫だ」と態勢立て直しに自信を示した。

 しかし、消費増税発言で内閣支持率も失速し、増税論議に不満を抱える民主党内では、「選挙後」をにらんだ駆け引きも徐々に表面化。小沢一郎前幹事長は複数区で自ら主導した2人目候補のてこ入れを公然と始めた。

 小沢氏は5日、静岡選挙区(2人区)に入り、小沢系の新人候補の選挙事務所だけを訪問。愛知選挙区(3人区)でも愛知県田原市の農協で幹部らに小沢系候補の名前を出して支援を求め、執行部への反旗を鮮明にした。

 愛知選挙区の小沢系候補は「民主党は参院選で争点にすると言ってこなかった」(1日)と首相発言を批判。静岡選挙区の候補も「増税の前に社会保障や財源確保を議論しなくてはならないが、今はその時ではない」(3日)と距離を置く。

 小沢氏に近い衆院議員は「消費税に関する言い方は当然、小沢氏側から指示が出ている」と明かす。

 小沢氏は首相の消費増税発言を批判しており、参院選で小沢系候補の得票が伸びれば、消費増税路線への批判票とも受け止められる。

 首相は投開票日をにらみ、消費増税に対する民意の戸惑いを突きつけられた。仙谷長官は5日の記者会見で、増税論議について「(国民に)議論をしなければいけないという成熟度はあるのではないか。ただ、選挙戦となると、落ち着いた議論ではなく、(与野党間の)言い合いになる」ともどかしさを隠さなかった。【横田愛、念佛明奈】

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