――日本企業は人材を有効に生かしていますか。
「無駄なことをしている社員が多すぎる。例えば、朝に銀座のデパートに行くと、社員全員が並んでお辞儀をしている。極めて非生産的ではないか。日本に必要なのは新しい企業だ。日本のほとんどの新興企業は、米占領下の第2次大戦直後に生まれた。2000年以降に誕生した企業をいくつ挙げられるか。米国では00年以降に誕生した企業が経済を下支えしている」
――お辞儀は日本文化のひとつです。
「もちろん、どちらの文化が優れていると言っているわけではない。だが、米国文化の方が経済成長に適している。我々は産業主体の経済から知識主体の経済に移っている。ジョブズCEOや(マイクロソフト創業者の)ビル・ゲイツ氏、(ディズニー創業者の)ウォルト・ディズニー氏がつくり出すような知識だ。人々は楽しいものには金を払う。今の日本にあまり楽しいことがない」
レスター・サロー氏の略歴
1938年、米モンタナ州生まれ。ウィリアムズ大卒。オックスフォード大でマクロ経済学を学び、ハーバード大で経済学博士号を取得。ジョンソン政権の米大統領経済諮問委員会(CEA)スタッフを経て、マサチューセッツ工科大学教授、同大スローン経営大学院長。エコノミストになった理由は「世界中どこでも通用するから」。その言葉通り、サウジアラビア、ノルウェー、パキスタンで政府顧問を務めた。
インタビューを終えて
明快、謙虚さ併せ持つ
サロー氏の授業で居眠りをする学生は一人もいなかったといわれる。物議を醸す発言で相手をあぜんとさせ、反応を楽しむという構図は授業でもインタビューでも同じだった。この日も数分おきに「君はどう思うんだ」と聞き返し、答えが気に入れば冗舌に、つまらなければぶっきらぼうに。冷や汗をかきっぱなしの1時間だった。
英フィナンシャル・タイムズ紙は7月、「いま求められているのは赤字削減か景気刺激か」と題したリレー討論を1週間掲載した。サマーズ米国家経済会議(NEC)委員長ら当代きってのエコノミストが論文で競ったが議論は真っ二つ。金融危機後の経済政策の方向性は定まっていない。
断定口調が持ち味のサロー氏は、迷わず景気刺激策の継続を主張する。ただ、そこには「景気回復のタイミングなんて誰にも分からない」という謙虚さと、ケインズなど過去の偉人が示した処方せんに対する尊敬の念が内在している。
かつてソ連の成長力を評価しすぎ、名前をもじって「レス・ザン・サロー(less than thorough、あまり緻密〈ちみつ〉ではない)」と言われたこともあるが、明快な語り口はいつまでも魅力的だ。
(国際部 森安健)
スティーブ・ジョブズ、アイパッド、経済成長、iPad、中国、世界経済、世界を語る
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