東京都台東区の都立高校で4月、1年生の女子生徒が母親から暴力をふるわれている疑いを校長が把握したにもかかわらず、児童相談所などに通告していなかったことが分かった。生徒は7月に再び母親から暴行を受け、保護された。児童虐待防止法は虐待が疑われる際の通報義務を定めており、都教委は「学校の対応は適切ではなかった」として校長を指導した。
同校や都教委によると、担任の男性教諭が4月下旬、女子生徒の額に直径数センチの青あざがあり、前歯1本の先端が欠けていることに気付いた。生徒が「酒に酔った母親から暴行を受けた」と話したため、担任が校長に報告したが、校長は「家庭訪問して状況を把握するように」と指示。児童相談所に通告するなどの対応を取らなかった。
生徒は7月上旬、「中間テストの点が悪い」などとして母親から再び暴行を受け、手足にけがを負ったため、担任が自らの判断で児童相談所に通告し、保護された。現在は都内の里親の元で暮らしているという。
担任は朝日新聞の取材に、「4月に校長に報告した際、『外傷を見ただけでは通報してはいけない。子どもの一方情報にすぎず、信用してはいけない』と言われた」と話している。一方、校長は「細かいやりとりは覚えていないが、家庭内で解決できるならその方がいいと考え、まずは事実を確かめるように指示した。結果的には甘い判断だった」としている。