アコースティックリバイブから登場したUSBケーブル「USB-1.0SP」(
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通常のケーブルに比べてどんなメリットがあるのか、早速試してみることにした。
信号と電源を分ける目的は2つある。まずは、両者を物理的に離すことによって、電源ラインから信号ラインへのノイズ輻射を抑えることができる。USBの電源ラインにはPC内部で発生した様々なノイズが乗っているおそれがあるが、1本のケーブルのなかでのノイズ対策にはどうしても限界がある。2系統の端子を利用し、一方は電源のみ、他方は信号だけを取り出して別々のケーブルで伝送すれば、少なくとも伝送経路上でのノイズの影響は確実に抑えることができる。
なお、パソコン側(A端子)は複数の端子が搭載されている機種が多いが、通常USB-DAC側(B端子)は1端子のみなので、今回の製品もB端子側は2本のケーブルをまとめて1つのプラグに接続している。
2つめの目的は、セパレート構造にすることによって、同社のラインケーブルやスピーカーケーブルと同様、径の太い単線を導体に採用することにある。今回は0.8φのPCOCC-Aを使っているが、既存のUSBケーブルは4本を1つのケーブルにまとめるために導体の太さが限定され、通常は0.2φから0.3φ程度の太さしか確保することができない。独立構造にすれば信号と電源それぞれに独立したシールドを施すこともできるため、外来ノイズ対策の点でもメリットが大きい。
プラグのハウジングにもこだわりがある。USBケーブルではモールドの一体型ハウジングが一般的だが、今回はアルミ削り出し材を採用し、制振性能や耐久性の向上を実現した。一体型ハウジングとは製造工程が異なるため、手作業になるが、任意の長さで製品化ができるというメリットもある。ケーブルを抜き差しするときの操作感も良好だし、見た目のグレード感の高さも文句なしだ。
電源を独立させていることから、実際の接続には若干の注意が必要だ。基本的にはB端子側を先にUSB-DACなどにつなぎ、そのあとでA端子側の2本のプラグをパソコンに接続する。それとは逆にA端子側からつなぐ場合は、赤いマーキングのある電源用ケーブルを先につなぎ、そのあとで信号用のケーブルを接続するという手順で結線すると、接続機器同士の認識がスムーズに進むはずだ。
パソコン側のUSB端子は数に余裕があるのが普通だが、ノートパソコンなどでゆとりがない場合は、B端子だけでなくA端子側も1つのプラグにまとめ、ケーブル部分だけを独立させた製品も用意されている(USB-1.0 PL)。
ちなみに私が使っているMacBook AirもUSB端子が1系統しかないので、やはりそのままでは使用できない。今回の試聴では3系統のUSB端子を積むVAIO type Tを組み合わせてfoobar2000で再生し、既存のUSBケーブルと音を比べることにした。
音源はリッピングしたロスレスデータに加え、リンレコーズやHQMからダウンロードしたマスター音源も聴いている。なお、1端子仕様のUSB-1.0 PLについては、後日あらためて試聴レポートをお届けしたいと思う。
オーディオグレードのUSBケーブル2モデルを比較対象にして何度か聴き比べた結果、既存ケーブルと今回の新製品の間に音の違いが確実に存在するという結論に至った。
まず気付くことはノイズフロアが低いことだ。アコースティック録音の音源では余韻が消えるまで緊張が持続し、ホールに残響が漂う様子が最後の瞬間まで聴き取れる。ライヴ録音の臨場感に違いが出るのは、聴衆の息遣いや気配感のような情報が曖昧にならず、細部まで正確に再現していることをうかがわせる。
音色や響きの質感そのものが変化することはないが、声のタッチやビブラートの揺らぎなど、ニュアンスの変化は意識しなくても無理なく聴き取ることができる。変化そのものは微妙だが、違いが存在することに一度気付くと、必ず聴き取れるような違いなのだ。
空間情報の再現精度が上がっているのか、オーケストラや室内楽は前後の距離感が深みを増し、音場の立体感が向上していることに気付く。マスター音源にはそうした空間情報が豊富に含まれていることもあり、マスター音源とCDレベルの音源の違いがいっそう際立つ効果もあるようだ。
モバイルPCは筐体内部の部品配置に余裕がなく、基板と配線が密集している。そこで発生した輻射ノイズがUSB端子や電源ラインを介してオーディオ信号に影響を与えていることは十分考えられるので、今回のような音の変化が生まれることは不思議ではない。
アコースティックリバイブの新しい提案は、USB伝送の課題の一つを浮き彫りにしたのである。