【モスクワ=副島英樹】記録的な猛暑による森林や泥炭の火災がロシア西部で拡大を続け、首都モスクワは7日、この夏最悪のスモッグに覆われた。米国務省はモスクワ周辺地域への渡航を差し控えるよう求める警告を出し、英BBCなどによると、ドイツ、フランス、イタリア各政府もモスクワへの渡航自粛を呼びかけた。1986年のチェルノブイリ原発事故で放射能汚染された森林への延焼も懸念され、「首都脱出」の動きが始まっている。
スモッグは6日から悪化し、視界不良でモスクワの空港も混乱。南部郊外のドモジェドボ空港や南西部のブヌコボ空港では6日には100便を超える発着に影響が出た。7日も視界は300メートル程度しかなく、40便がキャンセルされ、7便が近隣都市の空港に着陸先を変更。50便近くが飛び立てない事態になった。
懸念されているのは、旧ソ連ウクライナで起きた原発事故で汚染された森林を抱えるロシア西端部のブリャンスク州。ショイグ緊急事態相は5日、汚染地域に延焼すれば、放射性物質が大気中に拡散する恐れがあると指摘した。
現地の報道では、この発言をきっかけに、各国の在ロシア大使館でモスクワ脱出の動きが加速。カナダ、ポーランド、オーストリア、チェコが一部の外交官や家族を本国に戻すと伝えられている。
ノーボスチ通信によると、7日現在、ロシア西部を中心に577カ所で火災が起き、焼けた面積は約19万ヘクタールに達している。
原発事故による汚染森林の火災について、原発事故に詳しい今中哲二・京都大原子炉実験所助教は「汚染地帯まで火災が来れば、大気中の放射性物質の濃度が高くなり、消防士が被曝(ひばく)する可能性もある」と話す。一方、長瀧重信・長崎大名誉教授は「火災がチェルノブイリ原発の原子炉近くに及べば別だが、汚染地帯の放射性物質が広がっても地域住民の健康には特に問題はないだろう」とみる。