――米国のハンツマン駐中国大使と会った。
オバマ政権は方針を転換した。柔軟路線ではだめだと。拘束後の7月下旬には欧州連合(EU)の外交官たちとも話をした。
――今回の出版で逮捕の危険も高まるだろう。
劉氏は六つの文章の内容で懲役11年の判決を受けた。私は政治批評を1500本も書いている。でも、圧力に屈したら、たとえ投獄されなくても、私の心は投獄され、私の作家生命は終わる。
■国内から異例の名指し批判
中国人の活動家が国内にとどまりながら、指導者を名指しで批判する著書を発表するのは、極めて異例だ。
温首相は、胡錦濤(フー・チン・タオ)国家主席、呉邦国(ウー・パンクオ)全国人民代表大会常務委員長に続く党序列3位ながら、人気は圧倒的。柔和な表情や感情のこもった話しぶり、被災地で時には目に涙を浮かべて被災者をいたわる行動などから「平民総理」と呼ばれ、広く慕われている。
だが、余氏は温首相の「演技」に人々は惑わされていると指摘。政治体制改革や人権擁護、教育問題などに対する温首相の姿勢は、中国の最高指導部・共産党政治局常務委員の他のメンバーと何ら変わりないと断じる。「温首相が本当に心優しい人物かどうか、出版後の私を見ればわかる」と、いわば身を賭して挑戦状を突きつけた。
中国は経済大国として台頭し、改革・開放路線も定着しているとみられがちだ。だが、余氏は民主化はむしろ後退していると危惧(きぐ)している。経済的な利益への配慮から、国際社会の関心も薄れがちだ。そんな環境へ警鐘を鳴らす狙いが、あえて人気者の温首相に照準を絞って批判した背景にはある。
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