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「なくそう!子どもポルノ」キャンペーンに関する疑問点まとめ

アニメ・漫画・ゲームも「準児童ポルノ」として違法化訴えるキャンペーン MSとヤフーが賛同

 アグネス・チャンさんらが呼び掛け人として、いわゆる児童ポルノに反対する「なくそう!子どもポルノ」キャンペーンのネット署名受け付けが3月11日始まった。児童ポルノの単純所持の違法化や、アニメや漫画、ゲームなどで児童を性的に描いたものも「準児童ポルノ」として違法化するよう政府・国会に求めていく。キャンペーンにはマイクロソフトとヤフーが企業として賛同した。


 また復活してきた「準児童ポルノ」つまりバーチャルなものの規制運動。Microsoftとヤフーは単純に児童ポルノ規制として賛成しているみたいだけど、。
 一つは、規制内容についての疑問。また、もう一つは、関係している団体について。


1 バーチャル規制と単純所持規制について



 まず、大本のバーチャル規制、および単純所持規制の問題点については「虹の色:兼光ダニエル真ログ帳」の「児童ポルノ法の危険な行方」が詳しい。
 この中で指摘されている問題点のうち、もっとも大きいのは「基準があいまいであること」があげられる。
 日本においては「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」において「児童の性的虐待の副産物」の他にも「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したもの」も含んでいるが、2001年12月に横浜において開催された「第2 回児童の商業的搾取に反対する世界会議」の参加者向けに準備されたテーマ・ペーパーのうちの一つ「児童ポルノ」の要約によると世界的な基準は「児童の性的姿態及び性器に焦点を当てた書籍や、音声による表現物を含む、児童の性的搾取のあらゆる描写あるいは児童の性的搾取を助長するようなあらゆる手段」であり、この基準は対象が広すぎる。

 これと単純所持の規制が組み合わさった場合「子供を写した家族写真をネタに犯罪者に仕立て上げる」というようなことが可能であり、キャンペーンのサイトのスライドショーにあるように「単純所持を規制していないのは日本とロシアだけ」というような単純なものではない。実際、アメリカではこの主の規制は合衆国憲法違反とされているいるわけで、諸外国との対比を言うならばバーチャル規制とのセットになるのは矛盾する。

 また、バーチャルなものの場合においてはそもそも保護法益の対象、つまり保護されるべき対象が存在しない。
 一応、キャンペーンサイトにはこの点についての説明も掲載されているものの、講演の要約のため論旨がさっぱりわからない。

 一応、「ポルノを読んだら犯罪に走る」といういわゆる強力効果論であると解釈するならばこれについては基本的に肯定的な結果は出ていないし、講演中に提示されているデータにしても「ポルノで満足できなくなったから犯罪に走った」という可能性を棄却するようなものではない。

 また先にリンクした「第2回児童の商業的搾取に反対する世界会議」の「児童ポルノ」の要約にある「児童を説得するためにツールとして使う」というケースであるならば、これもまたあいまいな基準で運用されるべきものではない。
 CGを使って実在の児童と見分けのつかないものを作ることのみが禁止されるというのが妥当だと思うし、実際にアメリカではそういう基準で法律が制定されている
 
 児童ポルノは確かに忌むべき犯罪だが、だからこそ対象を拡散せずリソースは集中したほうがより高い効果を挙げられるはず。


2 団体に対する疑問


 まず、日本ユニセフ協会というのはいわゆるユニセフ、国際連合児童基金そのものではなく、民間の協力団体である(wikipedia)。
 ユニセフ東京事務所という、ユニセフそのものの下部組織は別に存在する。

 wikipediaにあるとおり、この日本ユニセフ協会については強引な寄付集めをはじめとして疑問が寄せられている組織。(参考12)。
 今回のも一種の実績作りではないか? という疑問は生じる

 また、ECPADの母体となっているのは日本基督教矯風会という団体。これはいきなりぽっと出た団体ではなく、禁酒運動に端を発した明治時代のころからある団体で、廃娼運動においては長い実績がある
 ただし、問題は母体がカトリック系の団体であるというところ。カトリックにおいては内心で思うことも宗教的な「罪」にあたる。
 つまり、18禁漫画にハァハァするのはいわゆる「姦淫の罪」を犯しているということで、ならばバーチャル規制も自然な流れではないか? という疑問が出てくる。 

 宗教を信じるのは自由だしそれに基づいて運動するのも自由だけど、その運動が内心の自由に踏み込むものではある場合には自らの宗教的信条を押し付けようとしているのではないか? 政治運動にかこつけた布教活動ではないか? という疑いは当然出てくるもの。


まとめ


 以上のキャンペーンに対する疑問点をまとめるとまず求めている規制内容そのものの問題点として


・基準があいまい過ぎる。特に単純所持との組み合わせにおいて問題が大きい
・根拠としているものが科学的に見てあいまい
・本来集約されるべきリソースを不必要なものに分散しかねないのではないか?

 また、推進している団体への疑問点として

・実績目当てではないのか?
・宗教的信条を押し付けようとしているのではないか? 政治運動にかこつけた布教活動ではないか?

 の二点が挙げられる。

 背景についてはとりあえず無視するにしても、単純所持規制の日本における導入は副作用が大きすぎる。
 逆に言うと、それだけ広範な規制が掛かっている状況においてより実効のある対策を求めるならばリソースの配分の強化の方が有効ではないか? という疑問が生じる。
 さらに団体の背景にまで踏み込むならば、組織の健全性や内心の自由とのかかわりにおいて強い疑問が生じる。

 繰り返しになるけど、児童ポルノというのは忌むべき犯罪だ。けど、だからといって不必要な規制や言論統制、宗教的信条の押し付けを正当化する理由にはならないはずだし、また、対策に効果をあげたければ根拠のあいまいなものにリソースを投入するのは意味がない。
 つまり「なくそう!子どもポルノ」キャンペーンについては、その背景から実効性にいたる全てに大きな疑問がある。

― by 狩田英輝 @ 10:40 pm comment Comment [0] ping TrackBack [1]
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