流通をネット企業に牛耳られる悪影響
ところで、10年以上の長きにわたって出版不況が続くなか、政府は今年を国民読書年と定めている。そのような年に世界的に電子書籍が盛り上がるというのは面白い偶然だが、それでは電子書籍が日本でも普及を始めたら、日本の出版業界にどのような影響が生じるだろうか。
単純に紙の書籍が電子媒体に置き換わるだけが続くならば、残念ながら電子書籍は出版社をさらなる苦境に追い込むかもしれないと予測せざるをえない。その理由としては二つの点を指摘できる。
一つは、電子書籍の流通がアマゾンやアップルといったネット企業に独占されていることである。
紙の書籍の流通は、出版社自身がコントロールできた。自ら書籍の価格を決め、書店やユーザーの反応を踏まえて広告/営業を行なってきた。新人発掘や企画/編集といった制作レベルでの付加価値を通じて優れた作品を生み出すこともさることながら、紙の流通に深く関与することが出版社の利益の重要な源泉だったのである。
しかし、電子書籍の流通はネット企業が牛耳っている。その結果、たとえば出版社の側は価格決定権を失った。
米国ではキンドルの発売以来、アマゾンが書籍の安売りを推し進め、今年初めまでベストセラーや新刊書であっても電子書籍の価格は約10ドルであった。この低価格に反発した大手出版社が約13〜15ドルでの価格設定を主張したところ、アマゾンは強く反発し、その出版社の書籍(紙と電子媒体の双方)のアマゾンでの販売を数日間停止したりもした。
もちろん、iPadの発売にともなって状況は多少変わった。アマゾンとアップルのあいだでの書籍の奪い合いとなり、アップルが新刊書について約13〜15ドルのあいだで出版社が価格を決められるようにすると、アマゾンもそれに追随したので、出版社の側も多少は力をもてるようになった。
とはいえ、電子書籍の価格の決定権は基本的にネット企業の側が握っていることに変わりはない。アマゾンとアップルのどちらかが脱落して流通が独占状態になったら、出版社の側は完全に流通への発言権を喪失するであろう。
そして、電子書籍の流通をネット企業に牛耳られることで、出版社の側にはもう一つ問題が生じている。それは、雑誌の定期購読者に関するユーザー情報を得られなくなっているということである。
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