【ソウル=牧野愛博】7月下旬に訪日した大韓航空機爆破事件実行犯の金賢姫(キム・ヒョンヒ)元死刑囚をヘリコプターに乗せて東京上空などを案内したのは「韓国側の依頼だった」とする中井洽拉致問題担当相の国会答弁に関して、韓国政府が「答弁は事実無根」として日本政府に抗議していたことがわかった。
中井氏は3日の衆院予算委員会で「韓国側が『彼女は永久にどこにも出られない。1カ所でいいから観光旅行させてやってほしい』と。私はどこかでかなえてやりたいと考えた」と説明。韓国政府は翌4日、外交チャンネルを通じ、日本政府に「そうした事実はない」と申し入れた。
韓国政府関係者らによれば、日本政府が金元死刑囚の訪日への協力を韓国政府に要請。韓国側はこれに応じたが、観光の要請はしなかったという。
一方、金元死刑囚は、拉致被害者の横田めぐみさんについて、昨年5月に日韓両政府関係者に、工作員教育を一緒に受けていた「金淑姫(キム・スッキ)」の紹介で1980年代に平壌で会った、と初めて証言。その際、「横田さんがその後、どうなったのかはわからない」と答えていたこともわかった。
金元死刑囚は「なぜ今まで黙っていたのか」との質問に、「淑姫や横田さんに迷惑がかかると思った」と説明。日本政府が横田さんの両親に伝えたところ、両親は情報を公開しないよう求めたという。
中井氏は4日の国会答弁で「(金元死刑囚から)『横田めぐみさんと田口八重子さんが生きている』とはっきりお答えいただいた」と説明した。