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日韓併合100年:歴史問題の清算を 文化財流出経緯で新資料

 ◇謝罪・補償 韓国「共同声明も」

 1910年に行われた日韓併合は、29日に条約発効から100年を迎える。韓国では植民統治時代に日本に流出した文化財に関する新資料の発見や、国会議員による共同声明発表の試み、市民団体によるシンポジウム計画など、両国の歴史問題をめぐる動きが活発化している。【ソウル大澤文護】

 ◇公文書など発見

 日本に流出した高麗時代の五重石塔返還を求める京畿道・利川(イチョン)市の「利川五重石塔還収(取り戻し)委員会」はこのほど、ソウルの韓国国立中央博物館で、石塔が搬出された経緯を詳細に記した朝鮮総督府の公文書や手紙類を発見した。

 文書は▽石塔を所蔵する私立美術館・大倉集古館(東京都港区)が1918年7月、朝鮮総督府の長谷川好道総督に「石塔譲渡」を依頼した手紙▽同年11月、朝鮮総督府総務局長が大倉集古館に「石塔下付」を許可する公文書--など。専門家の研究で文書の存在自体は知られていたが、保管場所は不明だった。同委員会で中央博物館所蔵文書を詳細に点検して存在を確認した。

 委員会の実務委員長を務める朴菖熙(パクチャンヒ)元韓国外国語大教授が、7日に京都、27日に韓国・利川市で開かれる二つのシンポジウムで発見資料について発表する。朴元教授は「(石塔流出は)植民統治下という特殊な状況の中でしか起きなかったことを裏づける貴重な資料だ。流出の歴史的背景を日韓両国の人々がともに考えるきっかけにしたい」と話している。

 ◇日本に呼びかけ

 韓国国会の有志議員は日本の国会議員にも呼びかけて、29日に両国国会議員の「共同声明」を発表する準備を進めている。

 韓国最大野党・民主党の姜昌一(カンチャンイル)議員らは、今年5月、「過去100年を清算し、新たな100年を迎えよう」と題する韓国側声明を発表。その中で「韓日両国議員が協議し8月までに共同声明を採択する」ことを日本側の有志議員に提案した。

 韓国側は共同声明に▽日本政府による謝罪と補償▽1965年の国交正常化時に締結された日韓基本条約で論議されなかった(被害)事項について追加または再協議▽日本首相の靖国神社参拝中止、強制合祀(ごうし)された韓国人名簿の削除▽従軍慰安婦、強制動員被害者などに関する資料の全面公開--を盛り込みたいとしている。いずれも日本が取ってきた立場に反するだけに、そのまま日本側から幅広い賛同を得るのは難しそうだが、姜議員は「双方で妥協点を見つけて共同声明発表にこぎつけたい」と話している。

 ◇市民団体が行事

 韓国政府は8月15日の「光復節」(独立記念日)には公式行事を予定している。一方、日韓併合100年の関連行事の主体は、韓国の市民団体だ。

 日韓併合条約が署名締結された8月22日から、条約が発効した29日にかけて、日韓両国の多数の市民団体が参加して、東京とソウルで「強制併合100年 日韓市民大会」が同時開催される。22日に東京で「韓日市民共同宣言」を発表した後、日韓併合が両国関係にもたらした影響などを考える学術会議やシンポジウムなどが計画されている。

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 ■ことば

 ◇利川石塔

 高麗時代(918~1392年)、利川にあった寺院に建てられた五重石塔。1915年、ソウルで開催された「朝鮮物産共進会」に出展され、その後、ホテルオークラ創業者、大倉喜七郎氏の父である喜八郎氏が、朝鮮総督府の了解を得て日本に運び出し、大倉集古館が所蔵してきた。

毎日新聞 2010年8月6日 東京朝刊

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