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2008年1月28日

エクセル2007、SP1で高速化も「2003」の4倍遅い?

田村 規雄=日経PC21

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 昨年12月、マイクロソフトは「オフィス2007」の「サービスパック1」(以下、SP1)を公開しました。サービスパックとは、製品出荷後に見つかった不具合の修正やセキュリティーの強化、パフォーマンスの向上などを実現する“追加プログラム”のこと。同社のサイトからダウンロードできるほか、この春にはCD-ROMによる配布も開始されます。

 日経PC21編集部では今回、このSP1によって「エクセル2007」のパフォーマンスがどのくらい向上するのかをテストしてみました。エクセルは、ビジネスパーソンが最もよく利用する必携のソフト。それがサクサクと動くようになれば、仕事はグンと快適になります。

 テストに利用したのは、マイクロソフト公認の「エクセルMVP(Most Valuable Professional)」である田中亨氏が作成した「エクセルベンチ」というマクロ。エクセルVBAを使って一連の操作を自動実行し、その処理に掛かった時間を計測するベンチマーク・ソフトです。具体的には、下の9つの操作について実行を繰り返し、それぞれの処理時間を測ります。

  • 描画…オートシェイプをランダムに挿入する
  • 再計算…3000個の数式を再計算する
  • UserForm…フォームを表示し、リストボックスなどの表示を変更
  • グラフ…3Dグラフを繰り返し描画する
  • 罫線…罫線を描き、線種などを変更する
  • 移動…書式を設定したセル範囲を移動する
  • ソート…100個の乱数を並べ替える
  • ブックの開/閉…ブックを別名で保存して開く
  • HTMLの開/閉…HTML形式のブックを別名で保存して開く

 テストの結果は以下の通りでした。トータルの結果で見ると、ウィンドウズXP上、ウィンドウズ・ビスタ上の双方で、SP1の処理速度のほうが1割近く速くなっています。特に目立っているのが、再計算の速さです。XP上では何と3分の1の時間で計算を終了しました。

図1 田中亨氏が作成した「エクセルベンチ」マクロで、エクセル2007とエクセル2007 SP1の処理速度を比較した。XP上とビスタ上で若干の違いはあるものの、SP1でパフォーマンスが向上していることがわかる。特に「再計算」は大幅に高速化された

 しかしながら、この結果を単純には喜べない事実が、すぐに判明しました。実は、同じテストを「エクセル2003」でも実施してみたところ、エクセル2003のほうがはるかに高速に動作することがわかったのです。

 編集部では、全く同じパソコンを使い、エクセル2003のSP3で「エクセルベンチ」を実施してみました。結果は以下の通り。すべての項目において2007が遅れを取っていて、SP1で高速化した「再計算」のテストでも、2003より1.5倍以上の時間が掛かっています。「グラフ」の描画に至っては、XP上で20倍、ビスタ上でも10倍、2007のほうが遅いという厳しい結果となりました。

図2 同じマシンを使い、エクセル2007 SP1とエクセル2003 SP3の処理速度を計測した。すべての項目で2003のほうが勝り、グラフの描画では10倍以上の差が付いている

 確かにエクセル2007では、グラフ機能が強化され、見栄えのする美しいグラフがワンタッチで作れるようになりました。ところが上の結果を見ると、その美しいグラフを描画するために、処理速度を大幅に低下させていることがわかります。これがグラフに限ったことなら、「美しいグラフを描くために、多少の重さは仕方がない」とあきらめるべきかもしれません。しかし、「再計算」という表計算ソフトの根幹をなす機能までも、前のバージョンに比べて遅くなっているのは納得できません。便利で高機能になったからといって、快適な動作をここまで犠牲にしてもよいのでしょうか?

 オフィス2007が店頭に並んでから、ちょうど1年が経ちます。にもかかわらず2007の普及が進まないのは、こうした“重さ”に対する懸念や、大きく変わった“操作性”への拒否反応があるのかもしれません。エクセル2007が以前のバージョンに比べてずっと多機能になったことは確かです。しかし、普段の使い勝手を犠牲にしてそれが実現されているとすれば、残念でなりません。

 なお今回のテストでは、評価機としてエプソンダイレクトの「Endeavor NJ5100Pro」を使用しました。CPUにCore2Duo T7700(2.40GHz)、2GBのメモリーを搭載し、ウィンドウズXPとビスタの両方をメーカーが正式サポートする高性能パソコンです。この最新機種をしてもエクセル2007が重く感じられたとすれば、メモリーも十分積んでいないような数年前のパソコンで2007を動かすのは難しいでしょう。次の「SP2」がいつになるのかわかりませんが、SP2ではこうした不満を解消し、サクサク動くオフィス2007へと脱皮してほしいものです。

図3 今回テストに使用したエプソンダイレクトの「Endeavor NJ5100Pro」。Core2Duo T7700(2.40GHz)に2GBのメモリーを搭載した高性能モデルでも、エクセル2007は重かった?


記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

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