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[20888] 【ネタ】Fate/ EXTRA 衛宮士郎の聖杯戦争
Name: りお◆5c784d97 ID:85afff74
Date: 2010/08/05 22:24
泥濘の日常は燃え尽きた
魔術師による聖杯戦争
運命の車輪は回る
最も弱き者よ、剣を鍛えよ
その命が育んだ、己の命を試すために






   残り 128人












≪1回戦 1日目≫



目が覚めた直後、自分が今どこで寝ているのか理解できなかった。

あのアカイ光景を夢だと認識するまでに数秒。
それから周囲が白いことに気付いた。

どうやら保健室らしい。
いつの間に倒れたのだろう。


それから、倒れる直前に見たあの光景を思い出す。

行き止まりのはずの廊下。
扉の先に広がる世界。
行く手を阻む、意味不明の人形。


そして、サーヴァント……。


サーヴァント、と聞いて思い出すのはあの騎士王である少女。
半人前以下の魔術師に剣を捧げ、付き添ってくれた女の子。
彼女と出会えなければ、己は何度も死んでいた。


……いや、彼女がいても何度も死にかけた。


紅の槍を持つ青い軽鎧を着た男には心臓を貫かれた。
灰色の益荒男はその腕力のみで人を握りつぶすことが可能だろう。
花鳥風月を愛する寺の門番は騎士王と競い合った。
神代の魔術師はたったひとことで人を殺すことができる。
紫の女性は学校の生徒、教師全員から生気を吸い上げた。
あの英雄王だって、簡単に人を串刺しにする。


そして、あの赤い男は……。


そんなことをぼんやりと考えてから、ベットから起き上がる。

どこにでもあるような保健室だが、どこか異質だというのを肌で感じる。



「やれやれ、ようやくお目覚めか。随分とのんびりしたものだな」



どこかで聞いたことのある声がした。

傍らに立つのは真紅の外套を着た、浅黒い肌の男。


1番見たくない男だ。

「……アーチャー……何でお前がいるんだ……」

すると男……アーチャーは嫌な笑みを浮かべた。

「ほう……もしやと思うが、私の真名を知っているのか?」
「……ああ、知ってるよ」
そう吐き捨てる。


「エミヤシロウ。俺の未来の可能性の1つ、だろ?」


そう言うと、アーチャーは少しだけ怪訝そうな顔をした。
「……確かに、私が人間だった頃はエミヤシロウと呼ばれていたが……私が生きていたのはこの時代から30年ほど前のことだぞ」
「え……?」




なんでさ?




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Fate/EXTRAの主人公が衛宮士郎だったら、という話です。
男主人公の名前が思いつかなくて、衛宮士郎と入力していたことからのネタ。


続くかどうか分かりません。



[20888] 1回戦 1日目ー2
Name: りお◆c3f99232 ID:85afff74
Date: 2010/08/08 00:07
混乱している士郎を他所に、アーチャーは姿を消した。
それと同時に保健室の扉が開く。

入ってきたのは……間桐桜。

「桜!?」
思わず士郎は立ち上がった。
「あ、衛宮さん目が覚めたんですか? 良かったです」
だが桜は他人のように振舞う。
「体の方は異常ありませんから、もうベッドから出ても大丈夫ですよ。それと、セラフに入られたときに預からせていただいた記憶メモリーは返却させていただきましたので、ご安心を」
混乱している士郎に、桜は淡々と説明をしていく。

それはとても家族同然の相手への対応ではなかった。

「聖杯を求める魔術師は門を潜るときに記憶を消され、一生徒として日常を送ります。そんな仮初の日常から自我を呼び起こし、自分を取り戻した者のみがマスターとして本戦に参加する――――以上が予選のルールでした。貴方も名前と過去を取り戻しましたので、確認をしておいてくださいね」

……要は、士郎が今まで何も思いだせず月海原学園で過ごしていたのは記憶が消去されていたから、だろう。
そして消された記憶が返却されたから、今までのことを思い出したのだ。


確かに記憶は戻っている。
だが……どうしてこんな場所にいるのか思い出せない。

自分がここに来る直前の記憶がないのだ。
それだけではない。

冬木で行われた第五次聖杯戦争。
それに参加した、士郎が知る限りのマスターとサーヴァント、真名などの知識は思いだせるものの、どのように出会い、どのように戦ったのかがまるで思い出せない。

唯一思い出せるのはあの紅の槍を持った武人に心臓を穿たれたこと。
そして月下での騎士王との出会いに……。

聖杯戦争を通して関わった、今現在士郎のサーヴァントとなってしまった男が仕え、そして裏切られた少女。
彼女との具体的な思い出はないが、それでも大切な存在だということに変わりはない。

そして今目の前にいる少女は家族同然だったというのに。
「……桜、俺、どうしてここにいるんだ? まるで思い出せないんだが……」
「え……記憶の返却に不備があるんですか? ……それはわたしには何とも。わたし間桐桜は運営用に作られたAIですので。

運営用?
AI?

士郎にはさっぱり分からないことだらけだ。

そして桜は今の士郎の言葉をなかったかのように微笑む。
「あ、それからこれ、渡しておきますね」
「? これは……?」
「携帯端末機です。本戦の参加者は表示されるメッセージに注意するように、との事です」

携帯電話のようなものなのだろうと士郎は判断した。











保健室を出て、士郎は溜め息をついた。
「溜め息をつきたいのはこちらの方だ」
すると傍らに赤いサーヴァントが現れる。
「貴様、どうしてここに来たのか分からないのか?」
「ああ、さっぱり。……ついでに俺があの聖杯戦争でどうやって過ごしてたかも覚えてない。……セイバーや遠坂と過ごしたってことは覚えてるのに」
「……そうか」
ふとアーチャーは懐かしそうな目をした。

例え記憶が磨耗しても、あのセイバーとの出会いが思い出せなくなることはないのだろう。

それからなぜか、アーチャーは眉間に皺を寄せた。
「……まさか、凛の実験か何かじゃないだろうな」
あの遠坂凛なら、肝心なところで「うっかり」をやらかす遠坂凛なら、実験で誤って士郎をここに送ってしまうことくらいやりかねない。

その事故の結果士郎を未来へ、しかもセラフに送ってしまったのだとしたら……。

「……有り得そうで怖い。アーチャー、この話はなしにしよう」
「……そうだな」

やはりアーチャーもシロウだ。この当たりの見解は同じらしい。

それから士郎はふとアーチャーを見上げる。
「お前さ、俺のこと殺したいとか思わないのか?」
するとアーチャーは言葉に詰まってから、視線を逸らす。
「……憎んでいる。だが、何故か殺す気が起きん。……恐らく、『座』にいる本体の方が心変わりをしたのだろう」
「……そりゃ良かった。後ろから刺される心配はなさそうだ」
「貴様の場合、前からでも簡単に刺されそうだがな」
「うるせえっ」

いくら殺される心配がなくなっても、この男は相容れないのだろう。










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第二段を投稿しました。
これも感想をくださった方たちのお陰です。

更新頻度はあまり高くないかもしれませんが、細々と繋いでいくつもりです。

どうか暫くの間お付き合いください。


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