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[20910] 【習作】我が愛しき『娘』たち (ネギま×戯言シリーズ+オリ主)
Name: 毒クジラ◆866ec420 ID:63cf0782
Date: 2010/08/06 19:57
ドン ドン と、ノックの音が聞こえたのは午後7時のことだった。

通いたくもない学校から帰り、やりたくもない宿題をしょうがなく終わらせ、やっと一息つけると思った矢先にこの雑音。

エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルは苛々しながらもそれを無視していた。

本来なら従者の茶々丸が率先して動く所だが、今日はクラスメイトの葉加瀬のところで月に一度のメンテナンスを受けに行っているので不在。

茶々丸の姉のチャチャゼロも居るが魔力供給ができないので動けない、というか動けてもそんな命令を聞きそうにない。

かといって自ら動くつもりもない。

(どうせジジィかタカミチか……無視だ、無視)

そう考え、さきいかを肴にワインを飲んでいたのだが……

ドン ドン ドン ドン

(うるさい、いい加減帰れ)

 ドン ドン ドン ドン

(えぇい!しつこい!!)

ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!

「うぅるぅさぁぁぁぁぁぁい!!!」

日々のストレスのせいか、それとも元々短気な性格なのか。エヴァンジェリンは意外と早くキレた。

「うるさい!うるさい!!うるさい!!!」

ワイン瓶を片手に雄たけびをあげつつ、ドカドカと足を踏み鳴らしながらエヴァンジェリンは玄関へ向かった。

(ジジィなら殴る!タカミチでも殴る!その他でも殴る!)

と握りこぶしに息を吹きかけ、玄関のドアを蹴破りながら怒鳴る。

「うるさい!!アレだけ無視すれば居留守を使っているのも分かるだろう!!そんなに殴られ…れ……?」

突然言葉が途切れる。

(なんだ?壁?こんなものあったか?)

エヴァンジェリンの目の前には壁があった。いや、それにしては布で覆われているし、迷彩柄だ。そんな趣味の悪いもの自分も従者も置くわけがない。

まさか、またどこぞの正義を掲げる魔法使いの嫌がらせか?と思いつつ、ふと上から視線を感じ視線を上げると

走馬灯を見た

死を覚悟した、という種類のものではない。後悔したのだ、視線を上に向けたことを。そう、それこそ『死ぬほど後悔した』

迷彩柄の壁は壁ではなかった。人間だった、とてつもなく大きな人間だった。

2m、いや、もしかしたら3mはあるかもしれない。上下ともに迷彩柄のジャージ
を着込み、ジャージを着ていてもハッキリと分かる膨大な筋肉の量。まさに『怪物』のような肉体。

しかし、こんなものでエヴァンジェリンは怯えない、こんな『もの』、600年生きてきて腐るほど見てきた。

問題は顔、そしてその後やっと気づいたその男の異様な雰囲気。

男はまるで友人家族が一斉に死んだように、いかにも悲しげに、今にも泣きそうな顔をしていた。

「こんばんわ」

と、男が泣き出しそうな顔を崩さず言葉を発した。

そのいかにも楽しげな、それでいて低い声色が、とてつもない違和感を発していた。

「な」

なんだ貴様は、と聞こうとしてエヴァンジェリンは自分が震えているのに気づいた。

声も、体も。

震える身体に渇を入れ、エヴァンジェリンはもう一度問うた。

「なんだ、貴様は」

その声はまだ少し震えてた。

「私の家に何のようだ」

ギロリと相手を睨みながらもエヴァンジェリンは理解しつつあった。

『これ』は会話をしてはいけないものだ、と。とんでもないことに巻き込まれるぞ、と。

すると





「ななななななななななななななななななななななななななななな」





と、まるで壊れたラジオのように男は怪音を発した。

「!?」

エヴァンジェリンが驚くのもかまわず、男はこぶしを振り上げ

「くっ!」

エヴァンジェリンが臨戦態勢に入ると同時に


ドカッと、男は自分自身の頭を殴った。


「……は?」

エヴァンジェリンはいけないと思いながらも呆然としてしまった。なんなのだこい
つは、先程からもうわけが分からない。

「んだと聞かれてどう答えれば良いのだろう。名前か?所属組織か?それとも二つ名か?」

ようやくまとも(?)に言葉を喋った事に安堵しつつ、エヴァンジェリンは臨戦態勢を解かない。

「…そうだな、三つとも答えてもらおうか」

男は少し考え

「まぁ、いいだろう」

と答えた。

「もしかしたら顧きゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃ」

またしても男はドカッと自分の頭を殴る。

「くになってもらえるかもしれんし、なにより『娘』を任せるかもしれないお方だ、礼は尽くそう」

といいつつ、男は二度ほど自分で殴った頭を下げ、その名を告げた。

「罪口商会第七地区統括――罪口積立だ。二つ名は『妊夫』 
 末永いおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

ドカッ

「付き合いを。『闇の福音』殿」



※主人公の名前が他の罪口作品の作者様ともろ被りだったので変更(積木→積立)
※主人公の二つ名を変更(妊婦→妊夫)




[20910] 第2話 忌々しい過去、痛々しい現在
Name: 毒クジラ◆866ec420 ID:63cf0782
Date: 2010/08/07 22:11


一昔前、『大戦争』があった。

鷹と狐の親子喧嘩を発端として、『普通』の世界を除いた『財力』、『政治力』、『暴力』の世界を巻き込み、しっちゃかめっちゃかのぐちゃぐちゃのぱーにした誰もが語りたがらない黒歴史である。

その『大戦争』、実はエヴァンジェリンも参加していた。

かといって自分から首を突っ込んだわけではない、巻き込まれたのだ、『呪い名』第六位の咎凪によって、まったくの偶然に。

その頃のエヴァンジェリンはもう『闇の福音』として名が知れ渡り、心身ともにかなりの実力を誇っていた。

そして少し悪い言い方をすれば[調子に乗っていた]のである。しかしそのことは誰も攻められはしないだろう。600年近く生き、その年月と共に力を付けて来たのだ。プライドの一つや二つできないほうがおかしい。

しかし、彼女は『大戦争』に巻き込まれてしまった。

きっかけは些細なことだった。とある街角で咎凪の構成員と目が会った。たったそれだけ、たったそれだけで彼女は地獄へと身を投じることになった。

毎日、毎日、殺し合いの連続、爆発オチは当たり前、、正義狂いの薄野武隊に付け狙われるは、石凪調査隊に本気で危ない所まで追い詰められるは、拭森動物園に頭の中を弄繰り回されるは、針金細工のようなロリコンに襲われるは、決意を新たしたような顔の燕尾服姿の少年に襲われるは、挙句の果てには鷹と共闘する事になるは……

散々だった、本当に散々だった。

あの『大戦争』で、エヴァンジェリンはプライドやらなんやらを粉々に粉砕され再構築するのに3年かかったほどだった。

ちなみにエヴァンジェリンと共に『大戦争』を転がり抜けたチャチャゼロは

「ケケケ、楽シカッタゼ」

とご主人よりメンタル面で強いことが明らかにされた。

とにかく、エヴァンジェリンは二度と『殺し名』や『呪い名』と関わらないよう誓ったのだ。

絶対碌な事にならない。今度こそ死んでしまう。あの『闇の福音』の脳内にそんな考えが浮かぶほど彼女にとって『大戦争』はトラウマだったのだ。

だというのに……

何故向こうから近寄ってくるのか?

エヴァンジェリンは本気で頭を抱えたくなった。






「…で?」

現在午後7時12分。

エヴァンジェリン邸の広間のテーブルには紅茶が二つ置かれていた。

何時までも玄関で立ち話もなんなので、エヴァンジェリンは積立を家に招待した。

……いや、本当はそのままお帰り願いたいところだったが、下手に刺激するとどうなるか分からん、というヘタレ思考が働いてしまい結局家に上げてしまったのだ。

とりあえず広間に案内し、紅茶を淹れ、積立の対面の椅子に座る。

そして開口一番の台詞が先程の「…で?」である。

「『呪い名』の罪口が、一体私に何の用だ?」

腕組、足組、威風堂々と積立に向かって問いかける。が、椅子を限界まで後ろに引
いているので少し情けない。

「単刀直入に言えええええええええええええええ」

ドカッ

「ば」

積立は相変わらす泣きそうな顔で、テーブルに手を付き頭を下げる。

「『娘』を買い取ってもらいたい」

「…は?」

人身売買?

いやいや、罪口がそんなことをしているなんて聞いたことがない。罪口といえば武器。武器を病的までに愛している集団。

ということは……

「『娘』とは…武器のことか?」

積立は首を縦に振り

「そのとおり。しかし私の『娘』たちは私が腹を痛めててててててててててててててててて」

そのまま前後にシェイクし始めた。

「ててててててててててて」

ドカッ

「ててててててててててて」

バキッ

「ててててててててててて」

グキョリ

「産んだ『子供』たちだ。そこらの『底辺』どもと一緒にされては困る。」

エヴァンジェリンは椅子からずれ落ちそうなほど引いていた。

「そ、そうか…それで?その『娘』とは?」

「この『娘』だ」

といい、何処からともなく布に包まれた細長い物体を取り出した。

そしてそのまま、布を慎重に剥ぎ取ってゆく。

「……ほう」

それは先端が鋭くおよそ70cmほどの刀身に女王蜂の装飾を施した柄、華麗な湾
曲をした金属板、人も魔物も魅了するような鈍く輝く黒。

エヴァンジェリンは何十年ぶりか感動していた。

これは、これは本当に見事な……






「ショットガンだ」






ズコーッ

そんな擬音が聞こえてきそうなほどエヴァンジェリンは見事にずっこけた。

「こっこここっこっこれのどこがショットガンだーー!!」

ゼーハー、ゼーハーと生きも切れ切れに突っ込む。

それに応えるように、積立は無言でショットガン(仮)の切っ先を指差した。

「?」

エヴァンジェリンは言われるまま覗いてみると、0.1ミリ程の穴が無数に開いていた。

それを確認しながらも、エヴァンジェリンはジト目で積立を睨む。

本当にこんなのがショットガンなのか?そのような意図を込めて。

そして積立はしょうがないというようにショットガン(仮)を持って立ち上がり、手
近な壁にその切っ先を向けた。

「???」

そして……


ズッガァァン!!


轟音と共に壁が滅茶苦茶に破壊された。

「んっなぁ!?」

「本来このショットガン「磯蜂」は人体に差し込んでから散弾を発射するのだ。いかにプロのプレイヤーといえど、人体ににににににににににににににににににに」

ドカッ

「直接打ち込まれては避ける事など不可能」

どうだ?良い『娘』だろう?

振り向きながら聞いてくる積立にエヴァンジェリンは少なくない殺意を覚えるが

(忌々しいことに……私はアレに魅了された)

そう、ショットガンだとかはもうどうでもいい。

アレが…「磯蜂」が欲しい。

あの黒い刀身を見たときからその感情は生まれ、今も育まれている。

しかしここにきてようやく一つの疑問が生じた。

「おい貴様、何故ソレを私に売り込んできた?」

わざわざ家に来てまで、何故。

「それはな」

積立は慈しみの目で「磯蜂」を眺めながら言った。

「『娘』が、そう望んだからだ」

「…………そうか」

もはや深くは突っ込むまいとエヴァンジェリンはそれ以上詮索しなかった。

「で、どうだろうか。買い取ってもももももももももももも」

ドカッ

「らえるだろうか?」

「ああ、これほどの一品、こちらから頼みたいほどだ。そちらの言い値で買おう」

それを聞くと積立は満足したように何度も頷き、

「……そうか」

そのまま頭を下げた。

「『娘』を、よろろろろろっろっろろしくお願いします」

深々と、祈るそうに。

それに対しエヴァンジェリンも力強く頷いた。




「それで代償だが……」







「痛覚神経を10cmほど頂こう」







「…………………」

もはや言葉も出なかった。

「いやなに、今外部から痛覚を直接刺激する武器を製作ちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅ」

ドカッ

「うでな。様々な人間からサンプルを取っているのだ」

「…………………」

「いやまさか、こちらから言い出す前に「言い値でいい」とは、さすが『闇の福音』殿。太っ腹だな」

「…………………」

「まさか、ああああああああああああああああ」

ドカッ

「の『闇の福音』殿が今更前言撤回することはないだろう?」

「…………………」

「では、始めよう」




――30分後

そこにはテーブルに突っ伏してピクピクと動くエヴァンジェリンの姿があった。

「それでは、失礼する」

「あ、ああ、やっと帰るのか」

少し本音が漏れたことを誰が攻められようか。

とりあえず不死身でも痛いものは痛いと再認識したエヴァンジェリンだった。

(痛覚神経って……再生するのか?)

そんな心配をしているエヴァンジェリンをよそに積立は答える。

「うむ、次は京都に行かねば」

「……京都?」

京都といえば、たしか来週自分のクラスが修学旅行で行く所では……

あの生意気なボウヤも楽しみにしていたはず……

「京都、京都、京都、京都の請負人、世界を救った戯言遣い。噂が本当ならばあの古槍頭巾の作品を二つも所持していたという……それが事実ならば………」

もはやエヴァンジェリンのことは無視しそのまま音も無く玄関から去っていった。

「はあぁぁぁぁぁ………」

ようやく厄介事が居なくなったことにエヴァンジェリンは深く安堵の溜息をつく。

そして、あらためて『あいつら』に関わると碌な事にならないと心の奥底に深く深く刻み込んだ。

(京都か………)

とりあえず、今年だけは行けなくて良かったと、可笑しなことと分かりつつ己が身を束縛する『登校地獄』に感謝するエヴァンジェリンだった。




※毒クジラは、へタレエヴァンジェリンを応援しています。





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