──第10話で、主人公がそれまでのストーリーを平行世界としてとらえ、そこに介入していくなかで、たとえば第4話の大金の入ったリュックや、第5話で突如、あの四畳半に現れる髭面の男など、ストーリー的には些細なことでも、視聴者的には小さな違和感として残っていた全ての事柄が、第10話につながっていく展開というのも、計算されたのでしょうか?
湯浅:その辺は特に脚本の上田さんがやりたがっていた所ですね。逆に僕は特にそんなに押したいと思っていなかった部分です。逆算して作っているようですが、5話の時点でまだ10話の脚本は出来ていないので、10話でそうなるという前提で5話を作り、実際は10話のほうが5話に合わせるように作っていったという感じですね。
──そういう事情を感じさせないほど、綿密なコントロールをされているという印象を受けました
湯浅:反対の事を言って変ですが、僕も全体的につながるよう努力しながら、そんなにきれいにつながっていなくても良いんじゃないの?と思う所もあって、整合性よりも、その場の流れや勢いを重視している部分があります。
「自分以外は何も変わらない世界があって、自分だけが色々なところに行くようなストーリーにしましょう」という事で合意しながら、帳尻を合わせようとしてくれる上田さんの言う事を聞かないで、その場の流れ重視にしてしまってる部分もありますね。
●これは誰の物語か?――明石さんではなく小津の物語になった理由は「主人公が『リア充」になるとみんなガッカリしちゃうんじゃないかと思って」
──10話で「私」が“四畳半”の世界のなかに閉じ込められてしまうなか、最後に“真実”に気づくきっかけになったのが、明石さんではなく小津だったのは意外な展開でした
湯浅:僕も最初に原作を読んだときには明石さんで終わると思っていたんですけど、「これは小津の話ですよね」という意見が、会議の際に特に女性の方からあがってきまして、それを聞いてるうちに僕も「明石さんに行くと見せかけて小津に行く」というのが面白いなぁと思うようになりました。
──たとえば最後のキーパーソンを明石さんにすると恋愛の要素が絡んできてしまうということでしょうか?
湯浅:それはそれで大変良いエピソードなんですけど、「好きだった相手との恋愛がやっと成就する」という話より、自分を駄目にする悪友でしかないと思っていたやつが、実はかけがえのない親友であったという話のほうが面白い、いいオチだと思ったんです。
──たしかにそこで明石さんではなく小津にしたことで、この物語がずっと抱えてきたディスコミュニケーションの問題が浮き彫りになった印象ですね
湯浅:それと、脚本の上田さんが言ってたことなんですが…… “リア充”というか、最後に主人公がガッツリ明石さんの方にいっちゃうと(視聴者が)みんなガッカリしちゃうんじゃないかと(一同笑)。
集計期間 : 10/7/27~10/8/2