【コラム】「愛国心」だけでは生き残れない企業(下)

 しかし、愛国心や道徳などを気にしていては、世界市場での競争で後れを取ってしまう。全世界で爆発的な人気を呼んでいるスマートフォン(多機能携帯電話端末)「iPhone(アイフォーン)」を販売している米アップル社も、製造は台湾のフォックスコン社が担当しており、液晶ディスプレー(LCD)、半導体など主な部品はサムスンとLGが供給している。そして、iPhoneを生産しているのは中国・深センの工場だ。これらは皆、価格競争を維持するための措置だ。だからと言って、アップル社に対して「非愛国的」という非難する人はいない。

 LG化学が電気自動車用バッテリー工場を、韓国ではなく、米国の地方都市に建設したのも、非愛国的だからではない。米国に工場があれば、米自動車メーカーへの納入に有利だからだ。

 韓国では、大企業が過去最高の利益を上げているにもかかわらず、中小企業に対して納入単価の切り下げを行い、国内への投資も少ないという批判が出ている。公正取引委員会と知識経済部が納入単価の実態調査を行っている一方で、企業は、世界市場での価格競争が困難だと判断すれば、工場を海外に建設し、部品を海外で調達する方向に転換する。こうした動きは、非愛国的だからではなく、会社自体が生き残るためだ。

 韓国の造船、自動車、家電製品の大企業がここ2-3年、大規模な投資を行ったが、そのほとんどは海外だ。これも非愛国的、不道徳だからではない。人件費や土地代が安く、税金や販売先確保などの面で有利な海外で生産しなければ、もはや生き残れない構造となっているからだ。

 価格競争から脱却し、高付加価値製品中心の産業構造へと変わらない限り、中小企業と大企業の共生は困難なため、産業構造の高度化がカギとなる。

車学峯(チャ・ハクボン)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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