【コラム】「愛国心」だけでは生き残れない企業(上)

 トヨタ自動車の本社がある愛知県豊田市に、保見団地という住宅地がある。ここには数千人の日系ブラジル人が住んでいる。そのほとんどがトヨタの下請け企業で働く臨時社員だ。そのため、彼らこそトヨタの競争力の源という皮肉も聞かれる。「乾いたタオルを絞り取る」と言われるトヨタのコスト競争力は、トヨタに部品を納入する下請け企業への単価切り下げによって成り立っている。下請け企業は納入単価を合わせるため、賃金の低い日系ブラジル人を雇用するほかないというわけだ。リーマンショックやリコール問題で販売台数が激減し、納品が減ると、下請け企業の多くは日系ブラジル人を大量に解雇した。こうしたことから、結果的にトヨタは、日系ブラジル人の血と涙で支えられている、という批判も出ている。

 業績不振に陥ったトヨタのコスト削減計画の中核は、2012年から生産される新車の部品価格を30%削減すること。行き過ぎたコスト削減でリコール問題が起こったという批判もあるが、トヨタは、コスト削減なしには世界市場で生き残ることができないことを見通している。

 日産は最近、小型車マーチを従来の価格から10万円引き下げ、99万9600円で販売している。価格引き下げの秘訣は、賃金の低いタイで生産し、日本に逆輸入すること。これまで日本の自動車メーカーは、日本の製造業の空洞化を防ぐという理由から、国内販売向けの自動車は国内で生産し、海外販売向けの自動車は海外で生産するのが原則だった。ところが今回、日産がこの原則を打ち破ったのは、価格競争力を確保するためだ。日産はさらにコスト削減のため、韓国企業から部品を調達する計画も進めている。ある意味、トヨタも日産も、極めて非愛国的な企業といえる。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

このページのトップに戻る