【コラム】韓国の大企業、もはや「韓国企業」ではない(上)

 「財閥」という言葉を久々に耳にした。韓国の大企業オーナーたちの「皇帝経営(独裁経営)」、「放漫経営」に対する皮肉を込めたこれらの言葉は、1997年のアジア通貨危機当時は多く聞かれた。少なくとも盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代までは、「大企業=財閥」という公式が通用していた。だが、現政権の発足以降、「財閥」という言葉はめったに聞かれなくなった。

 その「財閥」という言葉が、財閥の下でサラリーマンの成功神話を築き、大統領就任直後に「ビジネス・フレンドリー」を掲げた李明博(イ・ミョンバク)大統領の口から飛び出した。李大統領は、7月28日の国会議員補欠選挙を6日後に控え、「財閥(系の金融会社)が日歩を回収する例のように、高い利子を付けるのは社会正義上、良くない。大企業は数千億ウォン(数百億円)もの利益を上げている一方で、金のない人々は死にそうだと嘆いているので、心理的に負担になっている」と語った。

 この発言を契機に、与党や政府内部は「大企業」という標的を掲げ、攻勢を浴びせた。そして、「庶民と中小企業のために」と声高に叫んだ。

 「大企業は悪者で、中小企業は弱者」というスローガンは、決して今に始まったものではない。かつての金大中(キム・デジュン)政権や盧武鉉政権時代にも、選挙となれば与党も野党もこぞってこのスローガンを叫んだ。韓国の大企業は3000社程度だが、中小企業は300万社を超える。大企業に勤める人は160万人、一方の中小企業はおよそ1150万人に上る。票数だけで見れば、大企業は「極めて貧弱な少数派」に過ぎないわけだ。

 政府が本気で中小企業を支援しようというのなら、大企業と中小企業の線引きをするよりも、市場を混乱させ、健全な中小企業を不健全にする「病んだ中小企業」をまず排除する浄化作業から始めなければならない。それとともに、大企業が法を犯して中小企業を締め付けることを徹底的に防ぐため、市場の監視者としての本来の役割を忠実に果たさなければならない。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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