2010年8月8日
名うての監督で、ピンク映画出身者は少なくない。約60年の歴史があり、彼らを育んだ東京・上野オークラ劇場の旧劇場が閉館し、4日、新館が開館した。
同劇場は、草創期のピンク映画界をリードした大蔵映画が営む。先駆けの一つ、「肉体の市場」(小林悟監督、1962年)の助監督を務め、約400本もの作品を手がけた小川欽也監督(75)は「新しい劇場は、ピンク映画の存続への役割を果たす。シネコン並みにきれいなので、女性など新たな客層を期待したい。若い監督の励みにもなるだろう」。
井筒和幸監督は、注目を集めた81年の「ガキ帝国」の直前に小川監督のもとでピンク映画を撮った。「おくりびと」の滝田洋二郎や「相棒」の和泉聖治らも出身者だ。心の暗部をえぐる映像で知られ、ベルリン映画祭など海外でも評価される園子温監督も大蔵映画で撮影したことがある。
小川監督は「学校よりも、現場で学んだ方が早く一人前になれる。人物をなめるように撮る方法など、僕も巨匠のもとで多くを学んだ。若い作り手たちが、旧来の撮り方をぶち壊して、自身のカラーを作れるよう応援したい」と語る。
開館前の新館で1日、女性限定の上映会が開かれた。午後2時からの上映前に約30人が並び、141席は満席に。東京都の会社員(29)は「ピンク映画は人情ドラマやコメディーなど多彩で、作家性がある。暗いイメージがあって入りづらかったが、ここは開放的で明るい」と話した。(小林裕子)