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(三重)多度のイヌナシ自生地 国の天然記念物に


多度の自生地で実を付けたイヌナシ

 文部科学省の文化審議会は21日、桑名市多度町多度の多度峡南にある丘陵約3000平方メートルを「多度のイヌナシ自生地」として国の天然記念物に指定するよう川端文科相に答申した。

 イヌナシはバラ科ナシ属の落葉樹で、日本の野生ナシでは最も原始的な種類とされる。日本では三重、愛知、岐阜県の東海3県だけに生育。多度峡の丘陵は日本最大級の自生地で県天然記念物に指定されている。しかし、分布地域は市街地の近くに多く、住宅開発などで自生地が分断されたり縮小されたりして絶滅危惧(きぐ)種となっている。

 イヌナシは、遺伝子が近いもの同士での受粉は難しい。しかし、多度のイヌナシ自生地では、地元住民らが、近くに別グループの木と受粉させるなどの保護活動を続けた結果、生育が安定し、自然に増えた苗木も順調に育っているという。

 これで国の天然記念物は県内で計21件(地域を定めない天然記念物を除く)となる。イヌナシ自生地としては、四日市市東阿倉川の「東阿倉川イヌナシ自生地」に続いて2件目。

保護計画まとめて冊子に 桑名市教委


 桑名市教育委員会は、多度のイヌナシ自生地の保護計画と、ヒメタイコウチ(桑名市天然記念物)の保存管理計画をまとめ、それぞれ冊子(A4判)=写真=を各300部つくり、市内の図書館や県内の市町に配布した。ホームページでも公開しており、市教委文化課は「自然観察や保護活動に役立ててほしい」としている。

 イヌナシは、4月頃に白い花を咲かせ、直径1センチ程度の実をつける。保護計画では、2004年から続ける保護活動の紹介や、一定数がまとまっていないと増えるのが難しいという報告なども記載され、自生地を守る必要性を訴えている。

 ヒメタイコウチは県内で四日市、鈴鹿市など県北部でしか見ることができず、桑名市の天然記念物に指定された1985年当時、生息地は市内で2か所しか確認できなかった。今回の冊子では、2007年からの生息地調査で、丘陵地を中心にした分布状況が報告され、保護対策や開発時の注意を呼びかけている。

 また、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)のパートナーシップ事業となった、同市嘉例(かれ)川の「かれがわ田んぼの生きもの観察会」の取り組みなど環境保全活動も冊子で紹介されている。


2010年5月22日  読売新聞)
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