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本の最初に出る選手が鄭大世だ。
「韓国籍ながら北朝鮮代表で…大世の人生そのものが歴史による矛盾じゃないでしょうか」慎さんの言葉のように鄭選手の北朝鮮国家代表抜擢は異例的だ。実は彼が大学2年生である時も北朝鮮代表選抜の機会がやってきたが無産した。しかし今回だけは違った。“該当国の国籍を持たなければならない”と資格を明示したFIFAがパスポートで国籍証明をするという方法をとったのだ。鄭選手は韓国パスポートを発給されたことがなかった上、在日朝鮮のサッカー協会はFIFAに在日朝鮮人の歴史を説明した。北朝鮮もパスポート発給を決めた。
「大世は自分の性格も“二重の性格”だと言います。試合上やインタビューでは負けたくなくて目立つことも好きだが、その瞬間が過ぎれば後悔するという。『高飛車だった、エゴイスチックだった』と言いながら。パワフルなプレーをしながら内面は繊細で鋭敏で、意外なイメージを持ちました」
安英学選手はワールドカップ開幕前日、南ア共和国から慎さんに電話をした。「ヨーロッパ転地訓練の時は文字メールを送ったので、今回は必ず電話をしたかったそうだ。心がはずむと言う。結果を離れて見せたいものがあるそうだ。死力を尽くして走ると言いました」
北朝鮮は44年ぶりにワールドカップ本選に進出した。しかし試合は多くの無念さを残した。「ポルトガル戦はあまりに欲ばったようでコートジボワール戦は集中力に欠けたようです。印象的なプレーをして北朝鮮のイメージを変えたと思ったのに…。北朝鮮のように熱心にプレーすることはある側面で純粋だと見られます。正々堂々と追いやる勇ましい試合だったという人もいます」
慎さんも北朝鮮選手を直接取材することは不可能だ。代わりに安英学選手からたびたび一緒に訓練する新世代北朝鮮選手話を聞くことができたという。「率直に海外で活躍したい心はある。しかし私一人で決めることではない」という告白、各国リーグのサッカー水準や年俸の話を交わすという話が本にも登場する。彼は1回北朝鮮選手に会って話し合ったことがあるが、北朝鮮出身初、2007年ヨーロッパに進出した洪映早(ホン・ヨンジョ、現在はロシアFKロストフ所属)選手だ。
「2005年3月、台湾で行われた東アジア選手権予選戦だったが、洪選手がけがをして観衆席でチームの試合を見ていました。90分間、北朝鮮選手に対する話、サッカーを学んだ話をよくしてくれるんですよ。世界サッカーの流れや情報にうといと思ったが、そうではなかった。好きな選手が誰かと聞いたらブラジルのデニウソンだと言う。有名だがロナウドやジダンではない。たまに北朝鮮で海外サッカーを中継してくれるとか、平壌の人民大学習堂に資料もあると言ったり」
洪映早選手はヨーロッパ進出後、おしゃれになり、洗練されてアイポッドで音楽を聞いて、鄭大世選手のゲーム機でも遊ぶという。
彼は本の終わりに李忠成選手に対して書いた。彼は日本国家代表として2008年、北京五輪に出場した。日本代表になった、帰化した初の在日人なので海外同胞社会の衝撃は大きかった。しかし彼も「李」という韓国式性だけは捨てなかった。本に書くべきかためらったという慎さんが結局、李選手に会った理由だ。「私たちの未来を考えさせる話です。私も息子がいるが4世、5世たちが育っている。この子供たちが日本社会と海外同胞社会を一緒に思いながらも根を忘れずに朝鮮半島に対する愛着を持ったら良いと思いました。こんなの中、我々の現実と未来を悩んでみようという意味です」