きょうのコラム「時鐘」 2010年8月8日

 涙、別れ、港町。演歌によく使われる言葉である。切なく歌う「港町ブルース」には東北の気仙沼や四国の八幡浜など、なぜか寂しい港ばかりが登場する

金沢、敦賀、酒田、坂出など43港。国交省が選んだ重点整備港である。こちらも演歌になりやすい雰囲気があった。いまひとつ活気が足りなかったからか、富山新港のような存在感を示せなかった。認定を機に元気を出したい

一方、一県一港の基準があってか、七尾は選考から漏れた。北前船以来の金沢港以上の歴史を誇り、取り扱い量も大きかった。能登再生の期待を担っていた港だけに、今後の振興が県の肩にのしかかるなら辛い

新しい演歌をめざした阿久悠さんに作詞憲法十五条というのがあった。「どうせ」「しょせん」など常套句(じょうとうく)を使わない、交通機関など暮らしの近代化と人間の情緒はどのように関わり、いかに歌に表現できるかとの項目もあった

時代とともに港は変わり、物流は変化する。七尾港の未来に「どうせ」「しょせん」は禁物だ。選考漏れの衝撃を反発力に変え、新しい港を生み出す力にしたい。その知恵を絞りたい。