2010-01-30
iPadが作家と読者を救う理由
紙の本は『印刷』という技術によって支えられています。『技術』と言うのは、必ず『新しい技術』によって取って代わられる歴史があります。「印刷」というものは広く文字を伝えるための『技術』とするならば次の技術に当たる『電子印刷』に敗北する運命にあるのでしょうか。
音楽メディアの技術は、じかに書き込むレコード、磁気テープに記録するカセットテープ、光学記録のCD、そしてデータでやりとりするダウンロード販売と大きくそのビジネスを変遷させてきました。レコード、カセットテープやCDはそれなりに残ってはいますが、再度日の目を見ることはないでしょう。
次は文字や絵(写真)です。
出版業界は現在大きな問題を抱えています。書籍の出版点数が増加し、1冊当たりの販売部数は減り続けるという現象が起こっているのです。出版社は各店舗に並べる総販売部数を一定数確保しなければならず、出版社は出版するタイトル数を増やすことで販売部数の減少を埋め合わせようとする『数の帳尻あわせ』のような商売にならざるを得ないのです。
その結果、少しでも売れないタイトルはすぐに絶版書籍になり、次々と新しい新刊を量産しなければならなくなったのです。当然このような事が続けば作家の利益は先細りになります。一生懸命に書いても『出版社の都合で』読者に届かないまま消えていく状態が続いているのです。
そのような再販制度という陰鬱な雰囲気の中、『黒船』がやってきました。
『ipad』や『Amazon Kindle』です。
出版業界はいまだ旧態依然のムラ社会です。既得権益の確保と生き残りに必死で、このような『黒船』に対してどう取り組んでいけばいいのか苦慮しているところだと思います。護送船団方式で権利でガチガチに固めればますます作家が苦しむことになり、一部の著名人以外は、だれも日本で書かなくなる日も近くなることだと思います。
間の人が便利の名の下にシステムと法を作って権力を振るい、システムを維持するためのコストがたとえどんなに膨れ上がろうとも生産者と消費者が負担を強いることなど認めてはならないと思います。システムや法は技術の発達によって乗り越えられます。仕事のための仕事など無くして行く。様々な権利に守られなければ存在できない業界などは実は一度崩壊した方がいいのかもしれません。
業界が潰れようとも作家と読者が守られるなら『文化』はそこにあります。
書籍の流通から出版社と書店を抜き、著者と読者を直接つないで間のコストを省略すれば高めの印税を著者に還元することができるようになります。作家は生活や創作活動のための十分な糧を得て、読者は低価格で欲しい本がいつでも手に入る。大量生産、大量廃棄でそのコストを読者に負担させ、作家の創作活動を食いつぶす負のサイクルを打ち破る絶好の機会となりえます。
作品を直接、読み手に届ける。
一時、『ブラックジャックによろしく』で有名な佐藤秀峰氏があまりの割に合わない収入と不安定な状況に業を煮やして原稿料と印税を暴露した例をご存知の方も多いと思います。いままでは作家は実質、出版社の下請けでしかなかったのです。アルバイトをしながら作家を続けるしかないような環境に追い込んだ出版社の存在意義は考え直す必要があります。
オンライン上は様々なコストが下がります。書籍に人気が出れば、タイアップ等も簡単に行えると思いますし、さまざまな分野で才能のある新人を発掘してオンラインアワードで表彰したり、上手にいけばサインやグッズも販売したり、そのまま映像化などと夢が広がっていく可能性もあります。
あなたのブログもiBooksやKindleで販売されて各言語に翻訳され爆発的なブームを引き起こすかもしれないと考えるとわくわくしませんか。
参考文献
- 作者: スティーブン・レヴィ,上浦倫人
- 出版社/メーカー: ソフトバンク クリエイティブ
- 発売日: 2007/03/29
- メディア: 単行本
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参考記事
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