【コラム】「天安」沈没事件は北朝鮮の大勝なのか(上)

 今年3月26日に西海(黄海)のペンニョン島沖で発生した哨戒艦「天安」沈没事件は、北朝鮮の攻撃によるものだったが、中国やロシア、韓国国内の親北朝鮮団体などが慎重な態度を示しているため、北朝鮮を十分に断罪できずにいる。日本のある新聞は、「『天安』をめぐる外交では北朝鮮が勝利した」と報じた。もっともらしい見方だ。韓国でも「天安」沈没事件の真実を信じないという国民が3割にも上り、罰を受けるべき罪人よりも被害者のほうが苦痛を味わうというおかしな事態になっている。金正日(キム・ジョンイル)総書記と側近たちは「天安」を沈没させただけでも大成功といえるのに、韓国国民を戦争の恐怖に陥れ、韓国を分裂させたのだから、北朝鮮が言葉通り「大勝」を収めたと歓喜してもおかしくはない。

 「天安」の攻撃を主導したとされる呉克烈(オ・グクリョル)国防委員会副委員長は、今回の作戦の勝利で軍内部での立場を一層強化し、敗北主義が蔓延していた北朝鮮軍にも、勝利の自信がみなぎったかもしれない。このように、表面上は北朝鮮の完ぺきな勝利にも見えるが、実際には金総書記が手にしたものは小さく、逆に失ったものの方が大きい。

 北朝鮮出身の記者の目には、過去の二つの政権下で韓国国民に浸透した安全保障への無関心さは、大韓民国の安全を脅かす最も恐ろしい「内部の敵」として映った。今回の件で、戦争に対する恐怖であれ何であれ、安全保障の重要性について国民の意識が芽生えたのは幸いなことだ。また、北朝鮮が極秘に準備してきた戦力の実体が明らかになったのも、意味のあることだ。韓国軍がこうした戦力への対策を講じることが可能になったからだ。

 「天安」沈没事件で韓国政府は、北朝鮮に対する一切の支援を中断した。北朝鮮労働党39号室などが主導する海産物の水揚げを全面的に禁止したため、北朝鮮の主な貿易会社は窮地に立たされた。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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