交番から目と鼻の先が、サルの出没現場だと教えてもらった私が、現地(池袋2丁目界隈)でかき集めた情報によると、サルはニホンザルのオスで、体長は約1メートル。色は茶色という。この日午前5時半ごろ、豊島区高松に現れ、約2時間後の7時半には池袋2丁目の住宅街に登場。11時ごろには同エリアの4階建てマンションの上に現れ、午後1時ごろには同じく池袋2丁目の商店街「トキワ銀座」の街路樹に登っていた姿が目撃されている。何が気に入ったのか、サルは5時間半以上も池袋2丁目にいた。
街路樹のサルを目撃した男性会社員(32)は「電話で仕事の話をしていて、窓の外を見たら木にサルがいたんです。アッという間にいなくなりましたけど」と、興味なさそうに話し、「通報?通報はしていません」と淡泊な反応。「大騒ぎするほどの話かぁ?」といった表情だった。
「たしかに大騒ぎすることなのだろうか?」とこちらまで疑問を感じ始めてしまったのだが、モチベーションを下げても仕方ないので、私は自分に鞭(むち)をくれるような気持ちで、新たなサル出没情報が流れた板橋区東新町に移動した。
近くに川越街道が走っていると思えない、文字通り閑静な住宅街にたどりついてみると、黒塗りのハイヤーや中継車など報道関係車両約10台に20人を超える記者やクルーがいて、「殺人事件でもあったのか?」というほどの物々しい雰囲気。
しかし悲しいかなサルの姿はどこにもあらず。
埼玉県川越市や和光市などで目撃情報が報告されているサルが、川越街道を伝うようにして都会に上ってきたという説もあるのだが、もしかしたら“故郷”の埼玉県に戻ってしまったのか、その辺の物陰にまだ息を殺して潜んでいるのか、もちろん誰にも分からない。
20人以上の記者がジリジリとした日差しの下で汗だくになっていても、「ご苦労さん」とサルが気を遣って現れてくれるはずもなく、「ジィーーー」というセミの鳴き声が、暑さに拍車をかけるのだった。
しかし困ったのは、現地をいくら探しても、板橋署に通報した目撃者が見つからないこと。車を運転中のドライバーがサルを発見し、通報した後に走り去ってしまったなどという可能性もあるにはあるのだが、地元住民に尋ねても「えぇー、サルが出たのですか、知らなかった」というコメントばかり。
板橋署関係者の1人も「池袋で目撃された後、環七を渡って1時間後にここ(板橋区東新町)に現れたというのは、無理がある気がする。池袋からここまでサルが移動する間に、目撃情報が1つもないというのも変だ」と訝(いぶか)しがり、「夏は警察へのいたずら電話も増えるからなぁ」と、なんとも含みのあるコメントをするのだった。
報道陣の中には、この暑さに“ヤられて”しまったのか「もしかしたら東武東上線に乗って移動したのかも」「『改札口を通るサルを見なかったか』と駅職員に聞きに行こうか」と、トホホなことを口走る者まで出てくる始末で、一向に姿を現さないニホンザルと、この夏の暑さに“ヤられっぱなし”の1日なのであった。「おーい、サルよ〜、どこ行ったんかぁ〜、もう勘弁してくれ〜」。(佐藤修)