民主党への政権交代が決まった昨年の総選挙直後に2億5千万円の内閣官房報償費(官房機密費)を不当に引き出したとして、自民党の河村建夫官房長官(当時)が詐欺と背任容疑で告発されたことを受けて、東京地検特捜部は、内閣府に使途を照会する方針を固めた。
捜査当局が官房機密費の使途を照会するのは初めてとみられる。2002年に策定された機密費の取り扱い要領は、「出納管理簿」や領収書などの支払い関係書類について「5年間保存し、犯罪捜査の対象として捜査当局から求めがあった場合、(職員は)官房長官の同意を得て使用する」と規定する。支払先の記録が残っているかは不明だが、民主党政権は機密費の公開ルールを検討しており、対応が注目される。
河村氏は、自民党が大敗した衆院選から2日後の昨年9月1日、それまでの月々の使用額の2.5倍にあたる2億5千万円の機密費を引き出した。鳩山政権が発足した後の同年11月、当時の平野博文官房長官が公表して発覚した。
大阪市の市民団体は今年1月、「政権交代が確実になり、政策遂行のために費用を使う必要はなくなっていた」「自民党議員の個人的な利益を図る目的だった」として河村氏を告発。2月には鳩山内閣が「異様な支出」とする答弁書を閣議決定していた。
機密費をめぐっては、外務省職員による不正流用事件などを受けて、02年に取り扱いの方針や要領が作られた。使用目的を「政策推進費」「調査情報対策費」「活動関係費」の3類型に分け、「国の機密保持上、使途を明らかにすることが適当でない性格の経費」と位置づけた。