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【プロ野球】マエケン雪辱 12勝目で再び3冠 G戦涙の8失点から1週間2010年8月7日 紙面から
◆広島4−1巨人右手でグラブをたたいて、雄たけびを上げた。3点リードで迎えた8回無死一、二塁。広島・前田健は松本を併殺に仕留めると、わき上がる感情をあらわにした。最大のヤマ場を乗り越えて、勝利への道筋を付けた。8イニング1失点。7月7日の巨人戦以来30日ぶりとなる白星で、リーグ首位に並ぶ12勝目をマークした。 雪辱の思いで燃えていた。「この前、悔しい投球をしたので、きょうは借りを返そうと思って」。前回登板の7月30日。巨人打線にめった打ちされた。6回、エドガーに満塁弾を浴びるなど、その回だけで7失点。自己ワーストタイの8失点と崩れ、ベンチでは頭からタオルをかぶったまま目をはらした。試合後は「すいません」。ひと言だけ絞り出して、球場を後にした。 悪夢のマウンドから1週間。序盤から球がばらついた。「きょうは悪いと思って、開き直って投げた」。鬼門の6回、打順は前回と同じ2番からだった。「また松本さんか」。苦い記憶を振り払い、小笠原、ラミレスまで3人で封じる。7回1死三塁のピンチも無失点で乗り切った。ベストの状態でなくても投球を組み立てられる。全117球のうちカーブを14球といつもより多めに配分し、相手打線の目先を変えながら打ち取った。 チームの今季巨人戦の成績は3勝12敗。その勝ち星のすべてを前田健がもたらしている。歴然とした戦力差をはね返して孤軍奮闘する姿は、ファンの心を打ってやまない。赤いメガホンが揺れる左翼席を背に、22歳は「もっと勝てるように頑張る」と力を込めた。チームは後半戦に入って初の2連勝。自身は勝ち星、防御率、奪三振でリーグ3冠に返り咲いた。チームは下位に沈んでいても、けなげなエースの戦いは終わらない。 (永山陽平)
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