社説 RSSicon

泡瀬埋め立て 再開の論拠が心もとない2010年8月5日  このエントリーを含むはてなブックマーク Yahoo!ブックマークに登録 twitterに投稿する

 前原誠司沖縄担当相が、中城湾港泡瀬沖合埋め立て(東部海浜開発)事業の再開にゴーサインを出した。環境保全と経済振興の主張がせめぎ合う大型公共事業の経済効果を検証する必要性に迫られ、東門美津子沖縄市長が4カ月遅れで提出した土地利用計画の見直し案が“一発回答”で了承された。
 事業仕分けに象徴されるように、予算の無駄削減を推進する民主党政権の看板は透明性確保だったはずだが、経済効果の検証が尽くされたのか疑問がわく。決定も唐突感を覚える。国、市ともに説明不足の感は否めず、事業再開ありきの苦しまぎれの決着に映る。
 事業反対派は結果のみならず、それに至る過程にも反発を強めている。市、国双方が検証過程、経済効果の厳密なデータの開示など説明責任を果たすべきだ。
 前原氏は就任直後の2009年9月、泡瀬埋め立ての「1期(区)工事は中断、2期(区)は中止」の考えを打ち出し、波紋を広げた。
 同年10月、公金差し止め訴訟の控訴審判決で、福岡高裁那覇支部が、経済効果の見込めない事業として1区について公金支出差し止めを命じ、確定した。東門市長は2区の工事は中止し、1区は計画を見直すと表明していた。
 3日の東門市長との会談で、前原氏は、約1千億円の事業費に対し約1600億円の経済効果を掲げた見直し案について「堅めの予想がされている」と述べ、経済効果はあると評価した。
 内閣府は事前に見直し案を把握し、正式な提出前に、独自に県内外の有識者9人に聞き取りした上で、一定の課題をクリアすれば「経済的合理性はある」と判断したとする。とすれば、第一の当事者である沖縄市民は蚊帳の外に置かれていたことになる。
 それを受け、前原氏は(1)海外客等の誘客、目玉企業の呼び込み、多様な客層誘致によるリスク分散(2)民間企業の進出可能性を高める投資環境整備―など4点を留意事項として示し、事業再開の前提とした。
 外部の目を入れた客観的な評価の体裁は整えたかもしれないが、そもそも留意事項に拘束力はない。うまくいった場合の環境だけを列挙したにすぎないのではないか。大型埋め立てから海域の生態系をどう保全するかなど、自然環境への影響をめぐる重要な論点も置き去りにされたままだ。


次の記事:労働経済白書 長期安定雇用への工夫を>>
アイコン 今日の記事一覧 アイコン 今月の記事一覧 アイコン 最近の人気記事


関連すると思われる記事

powered by weblio


PR

社説一覧


過去の記事を見る場合はこちらをクリックするか、 ページ右上のサイト内検索をご利用ください。