「核兵器のない世界に」＝遺族ら、早朝から祈り―米出席「遅すぎる」・平和記念公園

　広島の街に原爆が投下されてから、６５回目の夏を迎えた６日。広島市中区の平和記念公園には、未明から多くの被爆者や遺族らが訪れ、犠牲となった人々を悼み、原爆死没者慰霊碑に手を合わせた。

　湊良介さん（７３）は毎年、母と妹の冥福を祈るために訪れる。「あの日」買い物に出かけて犠牲になった母の遺骨は、今も見つかっていない。２歳だった妹も、約１カ月後に栄養失調で亡くした。「母にはここまで生きさせてもらったと、感謝を伝えに来た」と涙を浮かべた。今年は原爆を落とした米国の大使が初めて参列するが、「十数万人もの人を殺しているのに、遅すぎる」と強い口調で批判した。

　石川正行さん（８０）は、同居していた伯母夫婦を亡くした。倒壊して焼けた家の下から伯母の遺骨を掘り出せたのは２日後。「核兵器とは共存できない。早くなくなってほしい」と平和を祈った。

　６歳で被爆した安芸区の女性（７１）は、仕事に出ていた父が犠牲となった。しかし、爆心地付近の川べりで見つかったのは父のズボンだけ。「母に連れられて、毎日、川の上流から下流まで遺体や遺品がないか探した」。静かに手を合わせながら、何度も涙をぬぐった。

　清水留美さん（４２）は、妹を亡くした祖母に代わって慰霊碑を訪れた。「どんなに熱かったかと思って」。そう言いながら、氷水が入ったコップをそっと供えた。

　遺影を手に涙をぬぐう男性や、友人らと一緒に焼香する学生の姿も見られた。