北野武インタビュー 「アウトレイジ」にいたる「数学」的映画観
(週刊朝日 2010年06月18日号配信掲載) 2010年6月9日(水)配信
岩切 何だったと思います、あれ?
北野 オレもボクシングやってたんだけど、あの人のボクシングとか剣道を見るとぎこちないんだよね、動きが。筋肉もボディービルで作ったリアリティーのない筋肉だし。かなり肉体的コンプレックスの強い人だと思った。格闘技やっても何してもうまくいかず、結局彼の肉体を制する方法って自分の肉体を殺すことだったんじゃないかな。
岩切 「あんまり死ぬのこわがってるとな、死にたくなっちゃうんだよ」。「ソナチネ」(93年)の中のセリフです。たけしさんにとって死って何ですか。
北野 オレはね、熱いサウナから上がることだと思う。上がると心地いい。逆にいえば心地よくなるためには少しでも長くサウナにいるべきだっていうか。ヘタすると、死ぬために生きてんじゃないかと思うことあるもん。
岩切 その死っていわゆるゼロじゃないんですね。
北野 ま、どっかに行くんだろうな。何かに転換するというか。
岩切 最近どうですか、北野監督と分身の人形の関係は。
北野 かなり人形と自分が近くなってきた。映画はまだ客観的に見られるけど、もう自分自身にはそんなに客観的じゃないもん。寿命だな、これ。リタイアするかくたばるか、そんなに長くないと思うよ。
岩切 新作の「アウトレイジ」は群像劇であり、世代交代劇です。
北野 結局は死ぬことが世代交代。死なないことには人間は進化しない。
岩切 暴力シーンが強烈でした。あっけにとられっぱなしというか。とくに後半で見られる幹部の殺され方は見事でした。
北野 あれは一番考えた。一番暴力的なやつは、一番悲惨な死に方をしないと解決がつかないと思っているからね。暴力映画なので暴力シーンを楽しんでもらうために、ただ殴る、撃つ、刺すじゃなく、違うやり方はないかとすごい意識して撮った。
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