北野武インタビュー 「アウトレイジ」にいたる「数学」的映画観
(週刊朝日 2010年06月18日号配信掲載) 2010年6月9日(水)配信
北野 男と女をA+Bとすれば、いくつかの男女の話をちりばめたから(A+B)(A+B)'(A+B)''……かな。
岩切 「3−4X10月」(90年)という数式みたいな題の映画もあった。
北野 あれは3対4で野球に勝ったというだけのことでね、それに10月公開予定だったからじゃないかな。まあ、理工系の荒っぽさで編集した、感情のない、バカな計算みたいなチンプンカンプンの映画。
岩切 最後にトラックで突っ込んだあと、その主人公が野球場のトイレから出てくる。
北野 ほんとは突っ込んだあと女と南の島に逃げる話だったんだけど、ああいう結末にした。うん、あれ便所しかなかった。みんな怒ってたもん、便所で考えたネタかよって。でもカットカットは面白かったでしょ。
岩切 あのハチャメチャがなかったら後の北野映画はなかったんじゃないですか。こないだ「コマ大数学科」で多面体を空間的に展開するプラトン立体をやってましたね。あれに似た形で多面体を時間的に開いたような映画が多い。
北野 けっこう意識的にそうしてるんだけど、評判が悪い。理解できないんだよ。やっぱり時間軸をずらさず、時間通りに進行する映画が一番心地いいんだね。
岩切 「HANA−BI」(97年)は心地よかったけどなあ。
北野 あれでもアメリカではよく分からなかったという人がいた。
岩切 あの映画の中に「自決」って言葉が印象的に出てきました。たけしさんは三島由紀夫の自決をどう体験しました? フランス座に入る前の22〜23歳のころだと思うけど。
北野 すごいショックだった。ちょうど新宿から市ケ谷の方にタクシーで向かってるときラジオから流れてきたんだよ、「市ケ谷の自衛隊に乗り込んだ作家の三島由紀夫が」って。
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