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【パンドラ映画館78】戦場から帰還した夫は"芋虫男"だった! ヤクザ監督の反戦映画『キャタピラー』

2010年08月05日21時20分 / 提供:日刊サイゾー

日刊サイゾー

 サイゾー本誌2005年9月号で若松監督をインタビューした際、ヤクザの世界から映画業界に転職した経緯を語ってくれた。17歳のときに父親とケンカして実家を飛び出し、宮城から夜行列車に乗って上京。カリントウ工場で働いていたが、カリントウを煮詰めていた巨大鍋の中に同僚が誤って落ちて死んだことから、マジメに勤めるのがバカバカしくなった。新聞配達、肉体労働などを経て、新宿を拠点にする暴力団の組員となり、縄張り内で撮影される映画やドラマのロケ現場に立ち会ううちに、「映画の世界は面白そうだな」と思うようになったと語る。その後、対立する組との抗争から半年ほど拘置所に入り、塀の中でヤクザ稼業から足を洗い、映画の世界に進むことを決意する。留置所での体験がよほど強烈だったのだろう、若松作品には監禁、もしくは抑圧された若者の怒りが爆発するストーリーが多い。また、このとき取り調べをした警察官たちが横柄な態度だったため、若松作品は終止、反体制的立場から描かれることとなった。若松監督は銃と爆弾の代わりに、映画でもって社会を挑発し続ける。

 今年74歳になったと思えないほど過激なアナーキストの若松監督だが、その一方では撮影で余ったロケ弁当はホームレスに配るなど心優しい一面も持つ。また、これは映画館スタッフに聞いた話なのだが、公開初日に若松監督は赤飯を炊いて自分でオニギリを握り、上映館まで自転車を漕いで赤飯のオニギリを運ぶのだそうだ。かっこ良すぎるよ、若松監督!

 他人の敷いたレールを走ることなく、無限軌道(キャタピラー)のごとく荒野を突き進む若松監督だが、不合理なものは大キライ。大本営発表に疑問を呈する。入場料がどの作品も1,800円という均一料金になっている日本の映画界に対しても、本作は一石を投じている。「戦争の真実を若い人に知ってほしい」という考えから、高校生は料金500円、大学生・専門学校生800円という格安プライス。大人でも前売り1,000円という安さだ。ベルリン映画祭受賞のニュース以降、『キャタピラー』を上映したいという全国の映画館から申し入れが殺到しており、配給も手掛ける若松監督は「この値段で構わないという映画館とだけ話をしている」という。

 本作はリハなし、全シーンほぼ一発撮り、撮影期間わずかに14日間という強行スケジュール(それでも早撮りのため12日間で撮影終了)で撮り上げられたため、全シーンに緊張感がみなぎっている。何もできずに悶え苦しむ久蔵が壁に頭を打ち付けて流血するシーンは血糊ではなく、リアルな出血である。また、それを見たシゲ子は笑い転げるが、これは寺島のアドリブ。共演者の出血を見て笑い出すという寺島の役への没頭ぶりがすごい。そんな中で、女物の着物を羽織ったキチガイ男をゲージツ家のクマさん(篠原勝之)が演じており、コメディリリーフ的な役割を果たしている。元々は脚本になかったキャラクターで、新潟のロケ地に若松監督から呼び出されたクマさんは、よく分からないままキチガイ男を演じていたそうだ。村中が本土決戦に備え、竹槍やバケツリレーの訓練に励む中、キチガイ男は赤フンドシ姿でひとり気ままに村中をゲラゲラ笑いながら徘徊する。

 ネタばれになってしまうが、映画のラストでキチガイ男はポツダム宣言受諾を伝える玉音放送を聞き、シゲ子と共に「終戦、ばんざ〜い!」と叫ぶ。玉音放送は聴き取りにくかった上に「耐えがたきを耐え......」という言葉から、いよいよ本土決戦かと勘違いした人も多かったという。その玉音放送を聴いて喜ぶキチガイ男は、実はかなりのインテリということだろう。マーティン・スコセッシ監督の『シャッターアイランド』と通じる風刺の効いたエンディングとなっている。世の中が狂っているのなら、まともな人間はキチガイのふりをするしか生き延びる手だてはないのだ。
(文=長野辰次)

『キャタピラー』
企画・製作・監督/若松孝二 脚本/黒沢久子、出口出 撮影/辻智彦、戸田義久 主題歌「死んだ女の子」元ちとせ 出演/寺島しのぶ、大西満信、河原さぶ、地曳豪、ARATA、篠原勝之、吉澤健 8月6日(金)広島、8月9日(月)長崎にて先行上映、14日(土)よりテアトル新宿ほか全国順次ロードショー公開 <http://www.wakamatsukoji.org>
(c)若松プロダクション



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