5600万円の賠償求める 山口地裁 ホメオパシー絡みトラブル |
2010年8月5日付 朝日新聞東京本社朝刊から
山口市の女性(33)が同市の助産師(43)を相手取り、約5600万円の損害賠償を求める訴訟の第1回口頭弁論が4日、山口地裁であった。
訴状などによると、女性は2009年8月に長女を出産。助産師は出血症を予防するためのビタミンK2シロップを投与せず、長女はビタミンK欠乏性出血症にもとづく急性硬膜下血腫を発症し、同年10月に死亡したという。
女性は、助産師が母子手帳にあるK2シロップ投与欄に「投与した」とウソの記録を残していた▽K2シロップを投与しない場合の出血症の危険性も説明しなかったなどと主張している。一方、助産師は関係者などに対し、ホメオパシーのレメディーを与えたと説明しているという。
ビタミンK欠乏性出血症は、K2シロップの適切な投与でほぼ防ぐことができるとされる。
この日の弁論に助産師側は出席せず、事前に請求棄却を求める書類を提出したが、詳細については言及していないという。
ワクチンを打つなとか薬を飲むななどと主張する過激なホメオパシーのグループも存在する。山口のケースでのビタミンK2シロップや抗生剤など、西洋医学で明らかに治療できるものは西洋医学で対応するのが当たり前だ。患者にレメディーを投与するのは医療行為で、医師や歯科医師ら、薬の処方権がある人以外がホメオパシーを使うのは大きな問題だ。
原子や分子の存在が分かった今では、「元の物質の分子が残らないほどに希釈した水を含む砂糖玉が体に作用を及ぼす」との考えが科学的におかしいのは明らか。科学的なものは不自然で体に優しくないという信念など、「ファッショナブルな自然志向」の存在が、ホメオパシーをはやらせる背景にあるのではないか。ホメオパシーに頼り、医療を拒否する危険性を理解する必要がある。