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最終決着前に民主党議連が異議!携帯マルチメディア放送の混乱

ダイヤモンド・オンライン8月 6日(金) 10時29分配信 / 経済 - 経済総合
最終決着前に民主党議連が異議!携帯マルチメディア放送の混乱
民主党の議員連盟によるヒヤリングの終了後、関係するキーマンが順番に「(記者団による)ぶら下がり取材」に応じるという不思議な光景が見られた。民主党関係者、NTTドコモ、マルチメディア放送、KDDI、メディアフロージャパン企画、クアルコムの幹部で、廊下はあふれ返った
「今からでも、2社でやってもよいのでは?」

 土壇場になって“ダークホース”が登場した。彼らの発言は、これまで関係者の多くが口に出さなかった正論だったので、事態はますます混迷の度合いを増してきた。

 8月3日の夕方、夏の日差しが照り付ける永田町の衆議院第2議員会館地下の会議室で、民主党の「情報通信議員連盟」が主催するワーキンググループが開かれた。

 その内容は、総務省が主導して検討が進められている「携帯端末向けマルチメディア放送」の事業者選定問題に関して、“政治主導”を標榜する民主党の議員(有志)による関係者ヒヤリングだった。

 たった1つの認定枠をめぐって争うNTTドコモと、KDDIの両陣営のトップ以下の幹部がずらりと顔を揃えたばかりか、総務省の担当者も議員会館に呼ばれた。

 情報通信議連事務局長の高井崇志衆議院議員は、何度も「勉強会の位置付け」と強調したが、ヒヤリングでのやり取りはインターネットの動画配信で生中継されるほど、注目を集めるものだった。

 そもそも、2009年の秋から始まった携帯マルチメディア放送の議論は、2011年7月にテレビ放送が地上デジタル放送に移行することにより、アナログ放送の周波数帯域の一部に“空き”が出ることを受けて、過去に「放送」の領域で使用してきた電波を「通信」の領域に転用することで有効利用してもらおうという構想だった。

 この問題がややこしくなったのは、途中で事情が変わったからだ。当初は2社だった認定枠が、帯域幅の狭さ(高速大容量のデータ通信では十分なサービスの実現ができない可能性がある点)を理由に、1社に減らされたのである。

 そして、そのたった1つの認定枠をめぐって、ドコモと国内放送局や総合商社などが中心の「マルチメディア放送」陣営と、KDDIと米クアルコムが中心の「メディアフロー陣営」によるガチンコの“一騎打ち”に発展した。

 端的に言うと、ドコモ陣営が 「放送局の論理」(大規模の電力で広範囲に電波を飛ばすやり方)を前面に出して安価なサービス計画を訴える一方で、KDDI陣営は「通信の論理」(キメ細かく電波の届く範囲を設計してロスを減らすやり方)を打ち出して技術優位性や過去の実績を訴えるなど、両者の主張はまるで異なっていた。

 これまで、総務省の担当者は、「どちらの方式も技術的な水準を満たしている」という公式見解を繰り返してきた。だが、最終的には、官僚がどちらかを選ぶという格好になるので、両陣営とも一歩も譲ることがなかったのである。

 民主党の議員連盟による3日のヒヤリングでは、勝又恒一郎衆議院議員が総務省の担当者に対して、正論をぶつけた。「なぜ、事業者の参入枠を1つにしたのか?まったく考え方が違う両陣営の優劣を、(実質的に総務省がコントロールしている)電波監理審議会の場で判断できるのか?将来に禍根を残すことにはならないか?」と。

 総務省の担当者が勝又議員の質問に対する説明を終えると、旧大蔵省出身の岸本周平衆議院議員が「納得できないよなあ」と声を上げた。かつては、一緒に仕事をしたこともあるという担当者の説明に正面から異議を唱えたのだ。

 そして、自らの官僚時代の経験を挙げながら、「官僚は恣意的にモノゴトを決める。だが、責任は取らない」などと述べた。ひとしきり官僚の思考・行動様式を批判した後で、持論の電波オークションの話を持ち出し、「今からでも2社でやってもよいのでは?競争することで、設備投資が増えれば、経済が活性化する」と“根本的な問題提議”を行ったのだ。

 競争させればよい――。この点が、携帯マルチメディア放送の議論で欠落していた部分だった。

 なぜなら、放送業界は、これまで新規参入事業者などの異分子を排除することで、秩序を維持してきた。同様に、通信業界もまた、小さな独占を手中にすることで、莫大な設備投資を賄ってきた歴史的な経緯がある。そのため、どちらの陣営も“独占的に事業を行なう立場”にこだわってきた。そして、当然の帰結としてゼロサムゲームを続けてきたのである。

 その結果、今回の事業者認定問題は、公聴会の回数を経るごとに相手の弱点を突くネガティブキャンペーンの場と化し、積年の“通信と放送の対立構造”が浮き彫りになるばかりだった。通信と放送の融合を模索すべきだったのに、奇しくも、両者の価値観が真っ向から対立してしまったのだ。

 総務省の担当者は、枠が1社に絞られた理由について、「インフラ投資が二重になる」「端末側もどちらか一方式しか視聴できなくなる可能性がある」などと説明してきた。確かに、“地デジ跡地”の周波数帯域は狭い。だが、狭さだけが問題ではないのだ。独占によって秩序を維持する、という独特の考え方によるものといえる。

 もとより官僚主導の政策決定を否定し、政治主導を掲げてきた民主党は、今回の問題に横たわる“矛盾”に目を付けた。岸本議員の発言は、スタンドプレイ気味だったが、これまで両陣営が避けてきた「どちらも認可して競争させればよいのでは? 何も1社にしぼることはない」という“核心”を露呈させたところは評価できる。

 そして、この日のヒヤリングでは、両陣営の姿勢に大きな変化が見られた。地デジ転換以降のローカル放送局の救済(既存の設備を利用して設備投資負担を減らす)を視野に入れていることで優勢とされるドコモ陣営が「あくまで1枠」を主張するのに対し、愚直に通信の技術論争に固執して躓いたKDDI陣営が「2枠でも構わない」と態度を軟化させたことだ。

 総務省の原口一博大臣は、この8月中にも、どちらかの事業者を認定する意向を示した。KDDIの小野寺正社長兼会長は、落選した場合には行政訴訟に踏み切る考えがあることを明かしている。

 総務省としては、難しい決断を迫られることになるが、この問題は官僚主導の典型的なケースでもあるので、“弥縫策”では誰も納得しないと思われる。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)


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  • 最終更新:8月 6日(金) 10時29分
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