トヨタ自動車は、世界的なリコール(回収・無償修理)へと発展した、アクセルの急加速を原因とする事故をめぐって再び訴訟に直面している。
カリフォルニア州サンタアナの連邦地方裁判所に2日に提出された訴状で、原告側は、トヨタが、電子スロットル制御システム(ETCS)が採用された車両は、そうでないものと比較して、アクセルが急加速しやすいことを認識し、その問題の解決には、アクセルとブレーキを同時に踏み込んだ場合ブレーキを優先させる「ブレーキオーバーライドシステム」の装備が必要なことに何年も前から気付いていたと主張している。
今回の主張は、ジェームズ・セルナ連邦裁判所判事に提出された、167ページに及ぶ集団訴訟を求める訴状の中でなされたもの。スピードが制御不能になるとの報道によってトヨタ車の再販価格が下落したとして、その経済的損失を主張する複数の原告を代表して提出された。
トヨタの広報担当者マイク・マイケルズ氏は、最近のリコールによって経済的損失を被ったとする原告側の主張をトヨタは拒否していると述べた。
「現在までのところ、原告側からは、トヨタのETCSに欠陥があるとの主張を補完する具体的な根拠も、その主張を補完する信ぴょう性のある科学的論証や証拠も提示されていない。トヨタは当社のETCSは完全に安全なものであると確信している」と、マイケルズ氏は述べた。
今回の訴訟は、アクセルの急加速を原因とする事故をめぐる風評やその他問題によって車両価格が下落したとして、トヨタ車の所有者にその損害賠償の支払いを要求するもの。そのほか、罰金の支払いや、ETCSが採用された全車両へのブレーキオーバーライドシステムの搭載も要求している。トヨタは、一部車種にブレーキオーバーライドシステムを搭載することを既に明らかにしている。
原告側が勝訴した場合、トヨタは数十億ドルの負担を強いられる可能性がある。原告側の代表を務める米法律事務所ヘーゲンス・バーマンのパートナー、スティーブ・バーマン氏の推計によると、原告側の人数は4000万人にも上る。このほか、トヨタに対しては、不法行為による死亡を主張する訴訟も提起されており、これについても最終的に数百万ドルの支払いを要求される可能性がある。
原告側の主張は、トヨタが他の民事裁判で提出した4万3000以上に及ぶ電子メールや報告書の内容に基づいている。それらの文書は、連邦議会にも提出されており、トヨタによると所有者の個人情報にかかわる資料も含まれているため、その部分は黒く塗りつぶされているという。原告側弁護士は先週、さらに2万3000もの文書を受け取っているが、内容はまだ未確認だとしている。
今回の訴状で言及されている、米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)がトヨタ関係者に2004年に送信した電子メールには、ETCSが採用された「カムリ」について、機械式のものと比較して5倍もの急加速の苦情が寄せられていることを示す図が含まれている。
このほか、急加速の苦情の調査を担当していたトヨタの技術者が、急加速を実際に確認し、当該車両の買い戻しを決定していたことを報告する文書について言及し、この件はNHTSAには未報告だったとしている。
さらに、09年9月にトヨタの技術者間で送信されとみられる電子メールについても言及されており、それによるとトヨタは07年に既に「他社が採用しているような予期せぬ急加速を防ぐための二重安全装置」の搭載について検討していたという。だが、安全装置は搭載されなかった。
また、トヨタのカトウ・ミチテル氏が米規制当局との渉外担当者であるクリス・サントゥッチ氏に07年2月に送信した電子メールには、「問題について詳しい技術者が会合に出席すれば、NHTSAの質問攻めにあうだろう。そのような事態は避けたい」と英語で記載されており、トヨタが電子的問題を認識している技術者をNHTSAに接触させないようにしていたことを示唆している。
この件に関しサントゥッチ氏にコメントを求めたが返事は得られなかった。また、カトウ氏とは連絡が取れなかった。