【デトロイト】トヨタ自動車の米国での大量リコール(回収・無償修理)問題に関連して、米運輸省道路交通安全局(NHTSA)の元幹部はこのほど、ウォール・ストリート・ジャーナル紙とのインタビューで、運輸省高官がトヨタに有利になりそうな調査結果の公表を少なくとも一時止めていたことを明らかにした。
証言したのは、NHTSAに27年間勤め7月3日に退職したリコール管理部門の責任者だったジョージ・パーソン氏(67)。同氏は「(上司に調査結果を)なぜ公表しないのかと尋ねると、長官室が望んでいないからだと言われた」と述べ、ラフード運輸長官に言及した。パーソン氏は「情報は集められ、報告書はできあがり、提出されていた」と指摘、調査結果を公表しないとの決定にはNHTSAの一部当局者は反対したと述べた。
これに対し、運輸省広報担当者は、NHTSAは引き続きトヨタ車のデータを検討しているとし、「調査はまだ完了していない」と反論した。トヨタの広報担当はコメントを控えるとした。
パーソン氏によれば、NHTSAは意図しない急加速で事故を引き起こしたとされるトヨタ車40台を調査。このうち23台について急加速があったと断定したが、23台とも電子データレコーダーやブラックボックスの記録では衝撃の瞬間にはスロットルは全開状態で、ブレーキは圧縮されていなかった。このことは、ドライバーが誤ってブレーキではなく、アクセルを踏んだことを示している。
同氏は、「NHTSAは、意図しない急加速の原因をあまりに長い間無視している。ドライバーのミスであり、データはペダルの踏み間違いであることを示している」と述べた。運輸省当局者が公表を遅らせた理由については、NHTSAがトヨタと親密すぎで、トヨタ車の電子系統の欠陥を厳しく検査しなかったとの批判が再燃するのを恐れたからではないかとの見方を明らかにした。
同氏は、「極めて政治的だった。トヨタに対する怒りで満ちているからだ」とし、「運輸省当局者はトヨタ車の欠陥を示すようなものが見つかるのではとの、はかない望みを抱いている」と皮肉った。
パーソン氏によると、同氏はトヨタ車の急加速事故の原因に関するNHTSAの調査について説明を受け、調査官に対し自分の考えを述べたという。運輸省広報担当者は、「パーソン氏は急加速の調査にはまったく関与していなかった」と否定した。
本紙は7月14日に、NHTSAの調査ではトヨタ車の急加速の事故の多くはドライバーがブレーキだと思ってアクセルを踏んだ結果起きたことが分かったと報じている。