事件があったマンション前にできた献花台。飲み物や食べ物などが置かれる中、亡くなった子どもたちに向けて、ある母親からのメッセージが添えられていた=5日朝、大阪市西区、森井英二郎撮影
仕事帰りに立ち寄った男性。マンション前にジュースを2本供え手を合わせた=5日午前0時44分、大阪市西区南堀江1丁目、丸山写す
事件が起きたマンション(右)周辺には、若者向けのカフェや衣料品店、雑貨店などが立ち並ぶ=5日午後1時4分、大阪市西区南堀江1丁目、石原写す
大阪市西区で幼い姉弟が自宅に置き去りにされ死亡し、母親の下村早苗容疑者(23)が死体遺棄容疑で逮捕された事件は6日未明に遺体発見から1週間となる。現場マンション前には連日100人以上が訪れ、手を合わせている。シングルマザー、虐待を受けた経験のある女性、元風俗店員……。「私だったら」。様々な思いが巡る。
ジュース、お菓子、おにぎり、おもちゃ、絵本、子ども服、「気付かずにごめんなさい」と書いた手紙……。飲み物の多くはストローが挿され、食べ物の箱やふたは開けられている。「幼い子でも飲みやすいように」との思いからだ。マンション前を訪れた人は3日に約150人、4日はさらに増え、5日も正午までに30人以上を数えた。
「ニュースを見て、いてもたってもいられなくなった」。大阪市生野区の病院勤務の女性(23)は下村容疑者と同い年で2歳の息子がいる。「子どもにとって母親がすべてなのに」と涙を見せた。1歳8カ月の娘がいる同市北区の英語講師女性(31)は事件後、自分のマンションの他の部屋から聞こえる泣き声が気になり始めたという。
シングルマザーで、4年前に東京から娘(7)と2人で移り住んだという近くの会社員女性(30)は、娘と一緒に手を合わせた。「似た境遇だけに胸が痛い。私も孤独だったが、この子が生きがいだから……」。下村容疑者にも子どもをかわいいと思っていた時期があったはず。「知らない土地に来て病み、現実逃避してしまったのでは」
大阪市住之江区の主婦(34)は下村容疑者のようにかつて風俗店に勤めていた。「稼ぎはいいけどストレスがたまる。終わるとくたくた。職場にシングルマザーは多かったが、遊びながらも子育てはちゃんとしていた。下村容疑者は早くに結婚したから遊びに夢中になってしまったのだろうか」
事件を防ぐにはどうすればいいのかと考え込む人も。大阪府高槻市の会社員女性(36)は1年前、通報されたことがある。疲れて帰宅し、寝付かない長女(2)を泣かせるままにしていたら警察官が来た。「部屋にまで入られ、色々聞かれてすごくショックだった」。それでも今回の事件後、「子どもの命を守る方が大切」と思うようになった。自分は絶対虐待はしないと思っていたが、今は「この子がいなかったら」と思う心は痛いほどわかる。夫や両親に支えられてどうにか育児ができている。「この母親(下村容疑者)はまだ23歳。もっと周りが支えてあげるべきだったのでは」
京都府八幡市の主婦(27)は小学生の時に両親が離婚。父親から虐待を受けたという。すぐに手が出る人で、仕事で家にいないことも多かった。不登校になり、冷蔵庫のものを1人で食べた。耐えきれずに3年ほどして、母親に一緒に住みたいと訴えて家を出た。いま5歳と4歳、1歳の子がいる。「自分も子どもに手が出ることもある。大事なのはパートナー。事件を減らすには男性が責任を持って育児に取り組む必要がある」(丸山ひかり、石原孝)