粟生２階級制覇へ王者に直談判「俺の挑戦受けてくれ！」

　プロボクシング前ＷＢＣ世界フェザー級王者で、２階級制覇を目指す同スーパーフェザー級２位の粟生隆寛（２６）＝帝拳＝が３１日、英ウェールズのカーディフで開催中のＷＢＣ主催の祭典「王者たちの夜」の席上でＷＢＣ世界スーパーフェザー級王者のビタリ・タイベルト（２８）＝ドイツ＝と初対面しタイトル挑戦を直談判した。王者は粟生の挑戦に前向きな姿勢を見せ、両者は早くも火花を散らした。

　ターゲットを捕らえた。１００人近い新旧王者が集まったイベントで粟生は意中の相手、タイベルトを目ざとく見つけた。王者は、いつか拳を交えるかもしれない挑戦者の顔すら知らなかった。

　公称では身長は粟生が１センチしか大きくないが、王者について「意外と小さい」。思い切って「俺の挑戦を受けてくれ」と直談判した。タイベルトは「ドイツで試合をしよう」と条件を突きつけ、粟生の表情をうかがうと「条件次第では日本に行ってやってもいいぞ」と王者らしく悠然と構えた。両者は対戦を約束し握手したが、わずか数分の“前哨戦”は終始ピリピリムードに包まれた。

　２階級制覇を目指す粟生にとってタイベルトは最大の関門だが、「見た感じいけると思う」と強気に言い放った。

　昨年７月にＷＢＣ世界フェザー王座を失い、１年になる。帝拳ジムの浜田剛史代表（４９）は「粟生は次の世界戦を行うタイミングにある。今後、王者陣営と交渉の場をもつことになる」と語った。タイベルトの試合のＶＴＲは入手済みで「パンチを大振りせず、ガードもいい。うまさと強さを兼ね備えた安定感がある選手」と分析している。

　英国出発前、粟生は「現役王者じゃないから微妙ですね」とイベントの出席に引け目を感じていたが、王者との接触に成功し「１回会っておきたかった。収穫です」と笑顔が戻った。２階級制覇へ、アイルランドで大きな収穫を得た。

　◆粟生　隆寛（あおう・たかひろ）１９８４年４月６日、千葉県市原市生まれ。２６歳。３歳からボクシングを始め、千葉・習志野高で高校６冠達成。０３年春に帝拳ジム入門後、同９月にプロデビュー。０７年３月、日本フェザー級王座獲得。０９年３月、ＷＢＣ世界フェザー級王座を獲得したが、同７月で初防衛戦で敗戦。戦績は１９勝（９ＫＯ）２敗１分け。身長１６８センチの左ボクサーファイター。

　◆ビタリ・タイベルト　１９８２年５月２５日、カザフスタン生まれ。２８歳。ドイツに帰化後の０４年アテネ五輪でフェザー級銅メダル。０５年１２月にプロデビュー。０８年２月、欧州連合スーパーフェザー級王座獲得（防衛１回）。０９年１１月にＷＢＣ世界スーパーフェザー級暫定王座獲得。その後正規王者に昇格し、今年５月に初防衛に成功。戦績は２０勝（６ＫＯ）１敗。身長１６７センチの右ボクサーファイター。