幼い2人はごみが散乱した狭い部屋に閉じ込められ、命を絶っていた。大阪市西区のマンションで幼児2人が遺体で見つかった事件。部屋の冷蔵庫は空っぽで、2人は死ぬ数日前からまったく何も食べていなかった。「育児が嫌になった。すべてから逃げたかった」と供述した母親の下村早苗容疑者(23)=死体遺棄容疑で逮捕。母親に見捨てられた幼い2人は、寄り添うように全裸で倒れていた。発見時、部屋のエアコンは稼働しておらず、2人は暑さのあまり自分で服を脱いだ可能性もある。
府警によると、司法解剖の結果、長女の羽木(はぎ)桜子ちゃん(3)は身長93センチ、長男の羽木楓(かえで)ちゃん(1歳9カ月)は身長78センチ。遺体は腐敗が進み、一部は白骨化。栄養も不足している状態だった。部屋の冷蔵庫には飲み物すら入っていなかった。
2人の胃と腸に内容物はなく、府警は食べ物に飢えて死亡したとみている。
ベランダや室内には、スナック菓子やハンバーガーの袋、おむつが散乱していた。子どもにファストフードやお菓子ばかり与えていたとみられる。近くのピザチェーン店の男性店員によると、今年2月、下村容疑者宅にピザ1枚と5個入りのチキンナゲット二つ、オレンジジュース1本を2回、宅配したという。
警察が遺体を発見する数時間前の今月29日夕、下村容疑者は約1カ月ぶりに部屋に戻った。その時の様子を、府警に「子どもの体は茶色に変色して腐っていた」と淡々と話しているという。
下村容疑者は三重県四日市市出身。東京の高等専修学校を卒業後、結婚して大阪で生活するようになった。父親の大介さん(49)は県立四日市農芸高校ラグビー部監督で、「こんなことが起きてしまって、驚きました。(死んだ)子どもが可哀そうで残念です」と疲れ切った様子で話した。大介さんは下村容疑者と10年近く連絡を取っていないといい「どこで何をしているかさっぱり分からなかった」と語り「そっとしておいてください」と声を落とした。
大介さんは84年に四日市農芸高に赴任。無名だった同校ラグビー部を全国大会に15回導いた高校ラグビー界の名監督として知られる。【福泉亮】
毎日新聞 2010年7月31日 大阪朝刊