きょうの社説 2010年8月6日

◎北陸の最低賃金 2けたの目安を尊重したい
 中央最低賃金審議会の小委員会が、今年度の地域別最低賃金引き上げの目安を決めたの を受け、都道府県の最低賃金審議会の協議が本格化する。労使の主張の隔たりが大きいため中央審議会の決着は大幅に遅れ、北陸の地方審議会も難航が予想されるが、政府方針に沿って2けた台の引き上げを求めた中央審議会小委員会の決定を尊重したい。

 今年度の地域別最低賃金の目安決定で重い意味を持ったのは、6月に持たれた政府と労 使代表三者による「雇用戦略対話」での合意である。「2020年までのできる限り早期に全国最低800円を確保し、景気状況に配慮しつつ、全国平均1千円をめざす」という内容で、この基本方針は政府の成長戦略にも盛り込まれた。

 国際比較で決して高いとは言えない日本の平均最低賃金(現行時給平均713円)を、 早期に欧州先進国の水準に引き上げようということである。

 今年度の引き上げ目安は、最低賃金が生活保護の給付水準を上回っている北陸三県など は10円程度、生活保護水準より低い東京都などは最大30円となった。

 政府目標に沿って大幅な引き上げを求めた労働側、中小企業の経営環境の厳しさなどか ら小幅引き上げにとどめたい使用者側ともに不満の残るところであろうが、激論の末、予定の答申時期より大幅にずれ込んで出された決定は、それなりに重いものがある。

 北陸三県の現在の最低賃金は富山679円、石川674円、福井671円で、政府が当 面の目標とする800円にはほど遠い。地方経済の景気回復の足取りには、なお心もとなさが残るとはいえ、賃金の底上げによって内需の拡大と格差是正を図るため、労使がともに生産性の向上に全力を挙げながら、政府目標の早期達成に努力することは重要である。

 最低賃金の引き上げ額の決定に当たっては、中小企業の賃金改定状況なども考慮しなけ ればならないが、すべての都道府県で10円以上の引き上げを求めた中央審議会小委員会の判断は妥当といえ、北陸の地方審議会もこの目安に沿った審議が望まれる。

◎議員定数の削減 段階踏んで着実に実行を
 参院選であれほど多くの政党が国会議員の定数削減を競うように訴えていたのに、臨時 国会が幕を開けた途端、発言が後退した印象を受けるのはどうしたことか。具体的な数字を掲げて削減を訴えた自民党内でも、選挙制度の見直しや2院制の在り方の議論が先だとか、さまざまな理由を持ち出し、議論にブレーキをかけているように見える。

 菅直人首相は臨時国会召集を受けた記者会見で、議員定数の削減について、年内の与野 党合意を目指す考えを示し、衆参の予算委員会でも同様の主張を繰り返した。

 民主党から出ている西岡武夫参院議長が「極めて不見識」と批判するなど、首相の求心 力の弱さを見せつける場面もあったが、参院選では、主要9政党のうち6党が定数削減を公約に掲げ、議員の数が多いというのは、ほぼ共通認識になっているのではないか。国会の主導権争いの中に埋没させず、段階を踏み、できるところから着実に実行に移してもらいたい。

 定数削減に関しては、民主党が衆院比例定数80、参院定数40程度の削減を掲げ、自 民党も衆参両院の定数を3年後に1割減らして計650、6年後には計500にする案を出している。定数の半減を主張する党もあったが、実現が極めて困難な目標は、やらないと言っているに等しいだろう。

 削減内容は各党で開きがあるものの、まずは次の選挙で実績をつくり、削減への道筋を 示す必要がある。選挙制度も重要なテーマだが、時間を要するこの問題の解決を前提にしていては、いつまでたっても削減には踏み込めない。

 今国会では、初当選または返り咲いた参院議員が6日間の任期で1カ月分の歳費を受け 取る仕組みが問題となり、歳費返納法案が6日に成立する見通しになった。

 そうした厚遇は国民の目からみれば明らかにおかしなことだが、議論の過程では消極論 もあり、歳費の日割り化は次の臨時国会に先送りされ、文書通信交通滞在費は対象外となった。議員が身を削るテーマになると、何かと理由をつけて及び腰の姿勢がみられるのは極めて残念なことである。