将来のキングを予感させる大きな放物線が描かれた。白球が、まっすぐにバックスクリーン左に着弾。中田が旭川っ子の大歓声を浴びながら、ダイヤモンドを一周した。
「すごい投手から打てたことは、今後の自信になった」
たくましく日焼けした口元から、真っ白な歯がキラリと光った。
六回、13勝でハーラートップの和田の2球目、外より122キロのチェンジアップをとらえ、豪快な4号ソロ。ここ8戦で4発。7月31日の西武戦では、涌井から3号を放つなど、エースから立て続けに豪快弾。スター候補にふさわしい“エースキラー”ぶりを発揮だ。
好調の裏には確固たるプロの自覚があった。先月の球宴休み中には、広島市内の実家に帰省したが母・香織さん(46)も息子の変化に驚かされた。「肉しか食べなかった子が、『もずくや、酢の物を出してくれ』と言うんです」。さらには「女性のダイエットみたい」(香織さん)と、食事後には必ず体重計にのってチェックしたという。1年目の春には100キロ超えだった体重も、現在は87キロ前後をキープ。体のキレが増したことで飛距離アップにもつながっていった。
精神的にもたくましくなった。ここ数日はのどの痛みとせきに悩まされていたが、打席では集中を切らさなかった。前夜(3日)は、香織さんが電話で「早く寝なさい」と話すと、この日のデーゲームに備え「9時には寝るよ」と素直に答えたという。
小谷野、糸井、大野にも本塁打が飛び出し、今季チーム最多タイの1試合4本塁打で5割復帰。この日、57歳の誕生日を迎えた梨田監督は「みんな効果的な、いい本塁打だった」と、中田ら若手の爆発に手応えを感じていた。