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消せる?地域の不信感 福島・更生施設、住民が運営チェック
 | 運営連絡会議について福島保護観察所所長らと意見を交わす住民=7月3日、福島自立更生促進センター |
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今月中旬にも仮釈放者の入所が始まる国営宿泊施設「福島自立更生促進センター」(福島市)について、地元住民が参加して運営状況を確認する「運営連絡会議」が4日、発足する。連絡会議の設置は全国4カ所の同種施設で初めての試み。地域住民がセンターの運営や入所者の更生状況を知ることができる唯一の窓口になるが、住民側は委員の人選や会議のあり方に不信感を募らせている。(福島総局・菊地奈保子)
<委員就任を拒否> 法務省は7月28日、連絡会議の委員を公表した。4日の初会合で、地元町会長や学校関係団体の代表、センターに反対する住民団体で以前活動していた元役員ら計8人を委員に委嘱する予定だ。 センター近隣の学校の保護者会など、反対運動を続ける団体にも委員就任を呼び掛けたが、少なくとも4団体は回答を保留し、3団体が拒否。現時点では反対運動を続けている団体からの委員就任はない。 参加を拒否した福島高保護者会代表の鈴木清治さん(52)は連絡会議の性格を問題視。「入所者の選定など施設運営について、センター側が『市民の了承を得た』という既成事実の積み上げに利用するのが目に見えている」と批判する。 センター近隣の御山(おやま)町町会は参加を保留した。同町会の伏見貞俊さん(77)は「反対でも、自由に発言できる会議ならば参加したいが、センターに反対する委員がいない現状では法務省の『御用機関』にしかならない」と説明する。 センターの運用開始は住民の反対で約2年間延期された。反対する住民団体と法務省の話し合いは擦れ違いを繰り返し、住民に根深い不信感を植え付けた。 伏見さんは「法務省はこちらが求めることには答えず、まわりくどい説明と『お願い』に終始した。住民の気持ちを真正面から受け止めるのでなく、その場を切り抜ける方法だけをずっと考えてきた」と住民感情を代弁する。
<「信頼して」だけ> 一方、入所者の特定につながる恐れがあるとして、運営連絡会議が非公開で行われることにも市民から批判が出ている。 子どもが近隣の学校に通う保護者は「情報公開を掲げながら内容を明かさないのは、都合の悪い話は出さないと公言しているのと同じ」と反発する。 福島保護観察所には当初、連絡会議の設置で住民の対立感情を緩和したいとの意図も感じられたが、今は「連絡会議を『信頼して』としか言えない」と煮え切らない。会議の内容を公開する方法も現時点では検討していない上、地域の思いに歩み寄ろうとする強い意志は感じられない。 福島大の新村繁文教授(刑法)は「住民と法務省の関係はこじれきっている。連絡会議は必要だが、反対する人は委員の人選自体に疑念を持っている」と指摘。「連絡会議が信頼を得るためには入所者のプライバシーを守りつつ、住民が納得できるように情報を公開するという難しい運営が迫られる」と話している。
[福島自立更生促進センター運営連絡会議] 地域の住民代表や学校関係者、有識者らが委員を務める第三者機関。法務省が入所者や運営状況、退所後の経過などを情報公開し、外部の視点で点検してもらう。地域の意見や考えを聞き、取り入れることも目指している。委員に守秘義務は課されないが、入所者についての情報は口外しないよう求められる。
2010年08月04日水曜日
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